逆チョコ(otojya) ページ37
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兄者が少し高そうな紙袋を下げてうちへやってきた。お店の名前が箔押しで印刷されていて、いかにもといった感じ。店名から推測するに、お菓子…かな。
「…お前のじゃねーぞ?」
「いや、俺を何だと思ってんの」
取引先?挨拶の予定なんてあったっけ?
にしても持っていくにしては小さいし、むむむ…と唸っていたら、兄者に「お前バレンタインってご存知ないの?」って言われてハッとした。
ああ、バレンタインね。
なあんだ貰ったのかーと笑えば、数秒の間の後、ばっかだなあ…とため息。え、どゆことなの。
「…逆チョコ。来る前に寄ったの」
「ぎゃくちょこ?」
「お前も毎年彼女に貰ってんだろ?」
確かに毎年貰ってる。しかも手作りだ。
ブラウニーだったり生チョコだったり、なんだかんだいつも違うもの。年々腕も上がっているような気もするし、ラッピングだって綺麗にしてくれる。俺の毎年の楽しみでもある。
あ、ちゃんとホワイトデーはお返ししてるよ?とドヤ顔で返せば、兄者は再度ため息をつきながら「そーじゃねーのよ」と言った。
…そうじゃないとは。
「うちのおかん曰くな」
「え、おついちさん?」
女の子はね、バレンタインのずーっと前から段取りしてるの。いつ作ろうとか、渡すタイミングとか一生懸命考えてくれるの。自分のオシャレだって気を抜けないのよ?わかる?だからね、たまにはこちらからも何かしてあげてもいいんじゃないかなーって思うわけ。
「兄者聞いてんの?って耳にタコが出来るくらい言われたわ」
「やめてよ、急に不安になるじゃん…!」
「お前も愛想尽かされたくなかったら、たまにはsurpriseもいいんじゃねえの?」
ニヤリと笑う兄者に二の句が継げない。
カレンダーを見れば、まだAに会うまで日にちはある。なんで今まで思いつかなかったんだろう、毎年貰うばっかりでAからしたらマンネリもいいとこだ。
彼女は、今年も一生懸命作ってくれるんだろうから。
できれば、それを邪魔しない何かがいい。
「ま、相談するならおついちさんにしてくれ」
「……耳にタコが出来るの容易に想像つくわあ…」
逆チョコ
(弟者、これ…っ)
(うん、あのね…毎年、美味しいのありがとう。今年は、その…Aが作ってくれたお菓子と一緒に飲もうって思って)
(うれしい…!)
弟者がプレゼントしたのはコーヒーかな、ワインかな。ご想像にお任せします。なんとなくチョコにチョコを重ねる事はしなさそうだなあって思ったので。
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tokiiiii(プロフ) - くるるさん» ありがとうございます…!!天を仰ぐ…?!えっ、嬉しいです…!最後のお話は書くのに割と難航した記憶があるので、そう言っていただけると安心します。また更新する予定ですので、しばしお待ち下さいね! (2022年1月28日 16時) (レス) id: 1acee39900 (このIDを非表示/違反報告)
くるる(プロフ) - 最後が最高すぎて天を仰ぎました😇ありがとうございます!! (2022年1月26日 22時) (レス) @page18 id: 71ebbc7488 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - tokiiiiiさん» きゅんとするような感じが疲れ吹き飛びます!生み出すのがお上手;)更新楽しみにしてます! (2021年5月31日 19時) (レス) id: d07ed213ea (このIDを非表示/違反報告)
tokiiiii(プロフ) - ちぃさん» ありがとうございます!え!嬉しい!告白は初めてです、嬉しい照れちゃう〜!! (2021年5月31日 7時) (レス) id: 459624764f (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 全部いいです。全部好き!好きすぎてtokiさんが好きです!!! (2021年5月30日 23時) (レス) id: d07ed213ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:toki | 作成日時:2019年11月20日 22時