第6章 エピソード10 ページ33
*****
(これを飲めというの…！？)
何か毒が入っているはず。
それにAクラスの生徒たちがニヤニヤしながら私を見てる。
どうしたらいいの…。
「リゼ、どうしたんですか？」
そこに来たのはオーロラだった。
…！Aクラスの人間は真っ当な貴族派。
平民出身の公爵令嬢のオーロラは、Aクラスの目の敵の相手…！
「…ふふっ。いえ、なんでもありません。オーロラ嬢、喉乾いてませんか？」
「…いえ？それより、あなた達はリゼに何か用でしょうか？用がないのなら、私はリゼにお話があるのですが。」
「偉そうな物言いね。平民出身のくせして、生意気よ。」
「…その言葉、聞き捨てなりませんね。」
そう言って現れたのはアルだった。
アルはカナーレ王国の王子。
カナーレ王国に代々忠誠を誓ったローゼント家を侮辱されて腹立たしいのだろう。
「公爵より下の人間が、そのような物言いなど。」
「…！カナーレ王子殿下…違うのです、これは…。」
Gクラスだった頃、アルがAクラスの人間に見下されていたのは有名な話だった。
けれど、SSクラスに昇格されると態度が変わったのも有名だった。
「…平民出身であるのは確かだ。ただ、それだけで物を言う君たちの姿は醜いのも程がある。周りを見てご覧？」
私も辺りを見ると、会場にいる貴族たちはAクラスの女子生徒たちを見て何か言っている。
(さすが大国であるカナーレ王国の王子だ。こんな風に言い返すなんて…。)
「…わ、私達は少し御手洗に行ってまいります。それでは。」
そう言って貴族令嬢達は会場を後にした。
アルが居なかったらどうなっていただろうか。
私はアルの方を見てお礼を言おうとすると、オーロラがアルにお礼を言っていた。
「あの…カナーレ王子、ありがとうございました。」
「いや、僕は何もしてない。ただ、今後からあの生徒たちにも注意した方がいい。また何か企んでくると思う。」
「は、はい！」
「…アルバート、ありがとう。おかげでオーロラが助かったよ。」
もう、アルと呼ぶのはやめよう。
アルバートも、自分のペースで前に進んでるのだから。
私はそうお礼を言って、別の使用人に飲み物を頼んだ。
(…さっきので疲れちゃった。)
私は何も考えずに飲み物を飲むと、急にお腹の辺りに激痛が走った。
…っ！！！
痛い…！！！
苦しい…。
「うっ…。」
「皇女殿下…！？」
遠のいていく意識の中で、思い浮かんだ人物はリチャードとお父様だった。
(ごめんなさい…リチャード。あの約束、守れなくて。お父様、ごめんなさい…こんな弱い娘でごめんなさい。)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：有栖茶 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年1月15日 11時
