九日目 ページ10
確かに自分はそういう事に関しては意外と引きずってしまう性分なのである。
彼氏、というのか彼女、というのか、元恋仲と呼べる人は世にいう男の娘というものであった。
ボブ程度に伸びた柔らかいふわふわとした黒髪に少し吊り上がった可愛らしい小動物の様な瞳、身長はさほど変わらなかった、甘え上手で少し独占欲が強くて、そんな事を考えているとやはりまだ僕は引きずってしまっているのだろう、大好きだったのだから。
別れは本当にあっさりとした感じで別れよう、の一言だった、何が悪いかとかそんなのも聞きたくなかった、ただただ目の前が真っ暗になった気がして、僕は一度抱き寄せて笑顔で承諾した、なぜ抱き寄せただなんて分からない、そんな事を思い出すと涙が滲んでくるものだからピアノを弾く事に没頭した。
厳密に言うとキーボードだが、ピアノを持って行く事は流石に出来なかった
今弾いているメトロノームという曲、確かこの曲はセンラさんが歌っていたっけ、何であの四人の事気付かなかったんだろう。
ふと我に返ると後ろから視線を感じたから振り返る
『え…いつから居たんですか』
そこにはセンラさんと坂田さんが居た、様子を見ると呆然と突っ立っている様な感じだった
「なぁ、綺麗…めっちゃ綺麗、もっと弾いて、もっと歌って」
坂田さんは身を乗り出しながら興奮気味に伝えてきた、センラさんはその場で座って同意するように頷いていた、僕は歌っていたのか。
言われた通りにピアノを弾いて歌った、有名な歌い手さんの前で歌うと思うと声が微かに震えていた気がした。
暫く歌っていると弱々しい声に綺麗な裏声と活き活きとした元気で綺麗な声が重なった。
お互いを引き出し合う歌い方、というのか、上手くは言えないけど聴いていて楽しくなり静かに自分はその旋律から離れ弾んだ音色を作り出す、すると二人はそれに合わせて楽しそうに歌声を重ねた、それがただただ楽しかった。
自分が一通り弾き終わると二人もぴたり、と歌声を止めた
『ふは、楽しい』
「A凄いな!! めちゃめちゃ上手やん!」
「本間やね、なぁAさんって音楽関係で何か活動してないですか?」
その言葉に坂田さんは閃いた表情を見せる。
「ろわさんの声質に似てる!」
勘が鋭いのか、僕が無意識に歌っていたのが失敗したのか、まさか認知されているとは思っていなかった
『はは、違いますよ、そんな訳ないじゃないですか』
キーボードのコードを抜く素振りをしながら僕は答えた
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ちゃむら(プロフ) - 注意ありがとうございます気付かなかったです…! (2018年3月29日 10時) (レス) id: 27480095f6 (このIDを非表示/違反報告)
、 - 実在する人物、団体、アニメキャラ等を扱う二次創作になりますのでオリジナルフラグ外して下さい。違反行為なので違反報告の対象になります (2018年3月29日 9時) (レス) id: cbd6b96090 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃむら | 作成日時:2018年3月29日 9時