それだけ.11 ページ12
「山瀬!!?まさかとは思うけど、」
「そのまさか、や」
やっぱりいたずらっ子みたいな顔。
うそやん、うそやといって。
そんなこと思ってる時も、腕をひかれてどんどんどんどん宮たちに近づいてく。
ただ、幸いなのは今日が休日ってこと。
休日の駅なんてたくさんの人でごった返しているし、いまだってもう少しで声だって聞こえる距離でいるのに、まだ宮たちは気づかない。
こんなに嫌がってるのに私を連れてく山瀬は、ただの酷いやつなんやろうか、それとも私の複雑な想いを感じ取ってわざわざキューピット的な何かになろうということなんやろか。
ふと山瀬の顔を見る。
……いきいきしとるな、このひと。
これは確実に後者では無い。
面白がっとるだけや。
そして、山瀬が宮の方をたたいた。
「よっ、宮」
ふりむく宮侑。
きっと練習試合か何かの移動中だったのだろうか、学校のバレー部のジャージを着こなしている彼は、やはりさすがだ。
「よー山瀬……ってあれ、A?」
宮の目線がわたしに刺さる。
なんて返事をしたらいいかわからない。
こんにちは、は変だし……まあなんでもいいか。
「こ、こんにちは」
私の戸惑った様子を見ていた山瀬が、隣で吹き出して笑っている。
くつくつと笑いを堪えててもわかるからね!?
誰のせいでこんなことになってんのよ、という目でじろりと見る。
「いまから練習試合かなんか?」
なんて話せばいいかわからなかったから、分かりきっているけどそんな質問をする。
自分の話題性のなさががっかりだ。
「うん、そう」
いつもより素っ気ないような返事。
なにかしてしまっただろうか。
彼と一緒にきていたバレー部の方々を待たせるのも申し訳ないから、じゃあね、と言おうとした。
言おうと、したのだ。
「先に行っとってください、あとからすぐ行くんで」
そういったのはほかでもない宮侑。
おー、とバレー部の人達が、先に行ってしまう。
正直はやくこの場から去りたいが、宮がわざわざ時間作ってくれたからなあ……。
「Aと山瀬はふたりできたん?」
宮侑の顔は、やはりいつもと変わらない。
駆け引きみたいなのは苦手やから、友だちも一緒だよ、と言おうとした。
だがまた遮られた。
今度は宮ではない。
「うん、そうだよ」
ーーーやませ。
何言っとるの、このひと。
賭けにですぎじゃないかしら。
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作者名:やふ | 作成日時:2018年7月13日 21時