水と菓子【meychan】 (ページ16)

今日:8 hit、昨日:3 hit、合計:2,527 hit

7-2 ページ16

Mey side

「違うのはただ、ルールなんだよ。みんなが双六をやっている盤の上に、私らだけチェスの駒を並べているようなものなんだ。」

「よく解らないけど、邪魔してるってこと？」

と、無邪気にも聞いてしまった。Aは、さくらんぼのような唇をすぼめて考え、それからにっと笑う。

「先に進みたい人間にとっては邪魔だろうね。ひとまとめにしてラベルを貼って処理場に引っ張っていきたい気持ちもわかる。指さして嗤いたい気持ちもわかるよ。

嗤えばいいんだ。どれだけ言葉を取り繕おうと、私達が他の人たちにマイナスしかもたらしていないのは動かしようのない事実だから。でも、」

Aは広げた自分の両手を見つめ、また顔を上げた。今度は皮肉な微笑ではなく、冬の晴れ間みたいに暖かい笑顔だった。

「私らは自分自身を嗤わない。ミミズは暗闇を怖がったりしないし、ペンギンは空が飛べないのを恥じたりしないように。それが生きるってことだよ。違うかい?」

その問いには答えられなかった。そんなこと、これまで考えたこともなかったから。だってなんか小難しそうなことを言っているけれど、要するにダメ人間だろ？

でも俺は人を殺したことがあって､殺された人を見たことがあって､生きることについて考えるしかなかった。

「そろそろ行こうか、メイ。

子どもたちを、救いに行こう？」