病み少年に会いました［BL］【オリジナル】

07.弟の疑問 ページ9

あの後席に戻って行った俊は、帰りに本屋に寄りたいとかで先に帰った。俺はずっと例の一年のことが引っかかりながら帰っていた。

「あいつ大丈夫かな……」

誰にも聞こえないような小さな声で呟く。

「誰が大丈夫じゃないの？」
「うわっ……って奏太か。聞いてたの？」

誰にも聞こえない声で呟いたはずなのに声をかけられてびっくりする。

実の弟には聞かれてしまっていたようだ。

「うん、聞いてたよ。で、誰が大丈夫じゃないの？」
「めっちゃ食いつくね、お前」
「だって気になるんだもん」

少し背が低く上目遣いで悪戯っぽく笑う奏太は本当に可愛い。自慢の弟だ。

……けど、これはまずいことになった。奏太は俊とは違ってそのことについて言いたいか言いたくないかを察してくれない。

ついでに言いたくなくても、奏太が一度気になってしまった疑問があれば、その答えを聞くまで食い下がってくれない。

色々なことに興味を持ちすぎて、ちょっとめんどくさい時があるんだ。

ちなみに今俺は言いたくない。だって、万が一喧嘩したことがバレたら……

かなり心配されると思うから。

けど、誰が大丈夫じゃないか聞かれてしまった以上、とりあえず誰なのかは答えるしかないと判断した俺はこう答えた。

「……今朝人助けしてね。助けた彼、かなりボコボコにされてたから大丈夫かなって」

……うん、我ながらいい回答。喧嘩したって直接的な表現は使わずに、人助けをしたとだけ言って大丈夫か心配してることを伝える。

ありがたいことに奏太はまっすぐで純粋だからすぐに信じてくれた。それ以上深く聞くこともなかった。

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