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Kei's Past
目を開けるとそこは、実家だった。
『慧、おかえり。今日はカレー作るからね。』
そう声をかけてきたのは、俺の母ちゃん。
そして、
『お兄ちゃんおかえりー!!!』
その後ろから俺に向かって走ってきたのは10個離れた小さな弟。
あとは仕事でまだ家に帰ってきていない父ちゃんを合わせて、俺は家族4人で住んでいた。
……………………そう、この日までは。
『わぁ、今日のご飯美味しそう!』
キッチンを覗いて、無邪気に飛び跳ねる弟。
たしかに当時の俺も、今日の晩御飯はやけに豪華だな、なんて呑気に考えていた。
……これが最後の晩餐とも知らずに。
『はいはい、あんまり暴れないでね。
慧、これ持っていってくれる?』
伊「あ、うん。」
でも、両親の振る舞いは何の違和感も感じないくらい"普通"だったんだ。
『おっ、美味そうな匂いだな〜!』
『お父さん!おかえり!!!』
晩御飯の準備が出来た頃、おそらく仕事から帰ってきた様子の父ちゃんがリビングに顔を出した。
『ほら、ご飯冷めちゃうから席座ってね。』
母ちゃんのその声で、家族全員が席に着く。
席に着いた時にふと見えた腕時計は、既に一周を周り終えそうだった。
「いただきます。」
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作者名:如月 | 作成日時:2021年11月20日 19時