変わらない記憶でも。 (ページ38)

今日:3 hit、昨日:9 hit、合計:61,417 hit

◇ ページ38

伊野尾side

久しぶりに見慣れたドアを押して店に入る。

…………こんな気持ちでここのお店に来るのは初めてだな。

そんなことを考えていると、レジで接客をしていた涼ちゃんと目が合った。

ちょうどいい。

伊｢涼ちゃん、あの席座ってもいい？｣

ちゃんと笑えているかな。

そんな不安を抱えながら涼ちゃんに声をかけると、彼はなにか覚悟を決めたような顔で返事をした。

ちょっと、そんなかしこまらないでよ。

…………あれ、もしかして俺ちゃんと表情作れてなかった？

ポーカーフェイスには自信があったんだけどなぁ。

席に着くと、向かいに涼ちゃんが座る。

あれ、なんだかんだ言って涼ちゃんとひとつのテーブル囲むの初めて？

……なんて、そんな冗談を言える余裕は今ないんだけれど。

山｢多分、このシステムについて全て知っていると思うけど………………一応、説明させていただきますね。｣

そう言われて涼ちゃんから色々と説明を受けるけど、案の定どれもこれも知っていることばかり。

そりゃあそっか。

山｢では伊野尾さん、準備はよろしいですか？｣

伊｢うん、大丈夫です。｣

心の準備はまだ少しできていない気もしたけれど、そんなのは気づかないふり。

涼ちゃんが伸ばしてきた手を見て、俺はゆっくりと目を閉じた。