最 終 話 技術 ページ38
離れた場所で待っているリヴァイの元へ向かい、来たときと同じように車椅子を押して墓地の中を歩く。
青かった空はほんのりと橙色へと変化し、ここに来てからどれだけ時間が経過したのかが窺える。
「Aは変わったな。機械以外に、人にも興味を持つようになった」
『私が変われたのは全部、仲間のおかげです』
人に興味がない。ただ単に物作りが楽しいから技術者を続けてきた。世のため人のためとかいうのは、正直考えてなかった。
そんな自分を変えてくれたのは、これまで一緒に過ごしてきた仲間たち。
初めて家族以外の人に興味を持たせてくれたハンジやリヴァイ。
友達になってくれた同期たち。
信頼して班長に推薦してくれた技術班。
壁外の技術を教えてくれた世界の技術者たち。
共に死戦を乗り越えてきたマーレの戦士たち。
いくつもの出会いを重ねるごとに大切だと思える人が増えていき、次第にその人たちのために自分の力を使いたいと思うようになった。
今では顔も名前も知らない人々のためなんていう大層な目的まで背負おうとしている。
『でもやっぱり、私が技術者をする理由は純粋に技術が好きだから。根本は変わってないし、これからも変わらないです』
「それでいい。俺はお前のそういう部分を気に入っている」
ふと足を止めた。急に止まった私を振り返って見上げるリヴァイと視線が重なる。
『私はリヴァイさんの笑顔がもっと見たい。リヴァイさんが便利だと思う道具をたくさん作りたいです』
「それもお前が技術者をする理由か？」
『はい。たぶん、一番の…』
気恥ずかしくなり視線を逸らす。
自分の作ったものでリヴァイに笑ってほしい。この想いがいつしか技術を楽しむ気持ちを追い越していった。
それほどまでに、私はリヴァイに惚れ込んでいる。
『また新しい掃除機を作ったら、笑ってくれますか？』
「エルヴィンの義手みてぇに余計なもん付けたら笑わねぇかもな」
『え…それは困るので、善処します…』
「本気にするな」
再び車椅子を押して歩き出した。
これからも私は技術者を続けていく。
人類を、仲間を、自分を、そして愛する人を技術で幸せにするために。
皆が求めるものを作ってこの世界の平和を維持し、科学技術を発展させる。この命尽きるまでずっと。
これが天才と呼ばれた技術者が成すべき使命だ。
沈みゆく夕日が、仲睦まじげに帰っていく2人の背中を茜色に照らしていった。
-完-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わたがし(プロフ) - moguさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！好みに合っていたようで光栄です！この作品を書いた甲斐がありました。尺の都合で省略した箇所を集めたスピンオフ的なものを作る予定なので、楽しみにお待ちください！ (3月17日 20時) (
レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - はにみずさん» 最後までお付き合いありがとうございました！いつも温かいお言葉を送っていただいて、本当に、心の底から感謝しています！読者様のおかげで最後まで続けられました。進撃にハマるきっかけとなることができて嬉しく思います！ボードにも感想ありがとうございました！ (3月17日 18時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
mogu(プロフ) - 作者様、キャラ設定もストーリーも好みドンピシャ過ぎて、正直完結がとても寂しいですが、更新本当にお疲れ様でした！小説の内容をより理解する為アニメを全話見返し繰り返し読ませていただくほどこの作品が大好きです。これからも陰ながら応援しております。 (3月17日 18時) (レス) @page43 id: 22906dc04b (このIDを非表示/違反報告)
はにみず(プロフ) - 更新お疲れ様でした！物凄く感動しました！主人公ちゃんの純粋で真っ直ぐな思いがリヴァイさんの心を動かしていたことに感動して思わず泣きそうになりました！この作品を読んで進撃の巨人が更に好きになる切っ掛けになりました！最後に、これからも応援させて頂きます。 (3月15日 21時) (レス) id: a327b3fc09 (このIDを非表示/違反報告)
LIVI,LOVE - 作者様、私の作品作り始めましての設定だけ投稿しました！作者名は『コットンキャンディー』です！作品名は『兵士長の双子の妹も最強でした、、、』です！これから、アニメとマンガを見つつ、お話し作っていきます！ (3月2日 11時) (レス) id: 7441eb7b04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わたがし | 作成日時：2024年1月21日 10時
