第158話 集中 ページ16
窓から差す太陽の光で目が覚めた。いつもの時間だ。
兵士だった頃は不規則な生活をしていたが、最近では徹夜もしなくなり毎日決まった時間に起きられるようになった。
今日は非番の日。普通なら体を休めるためにもうひと眠りするところだが、作りたいものが山ほどあって時間が惜しい。
起き上がって顔を洗い、身だしなみを整えてから食堂に向かった。
本日の食事担当のアニからスープを受け取る。朝は食欲がないのでこれだけで十分。
「Aは今日非番だったね。何するか決めてるの？」
『掃除機を作る。最近他の機械作っててあんまり進められてないから』
「じゃあ、せっかくの非番なのにいつも通り工房に閉じこもるってわけ？」
『うん、そうだよ』
非番なんて関係なく工房に引きこもる。昔からそうしているし、むしろ工房に住みつきたいくらいにあの空間が好き。
相変わらずの機械バカ、とアニは呟いた。安心したように少し笑って。
食事後、工房に行き設計図やメモを広げて掃除機の製作を始めた。
前回リヴァイにあげたものは立体機動装置の原理を取り入れた手動式の掃除機。
今思うととても拙いもので、よくあんなものをあげられたなと恥ずかしくなる。
それでもリヴァイは喜んでくれたが、あれから私はたくさんの技術を学んだのだ。
手に入れた知識を総結集させた、世界にひとつだけの最高に便利な掃除道具を作る。
それでリヴァイにまた笑ってほしい。笑顔が見たい。
元々はガビとファルコを助けるために作り始めたのに、いつのまにか私情が大きくなってしまっている。
申し訳なさを感じつつも両方が満たせるのなら効率が良いと思ってしまうのは、やはり人としてよくない。もっと利他の心を持つべきだ。
物作り中はよく集中できる。
掃除機を組み立てながら、最近悩んでいる自分の性格についてあれこれ考えているうちに思考の渦へと飲まれていった。
ーーーーーーーーーー
コンコンッと工房の扉をノックする音で現実に引き戻される。ノックの主はリヴァイだった。
『あ、兵長…お昼ごはんですか？』
「時計見てねぇのか？昼飯はとっくに過ぎてるぞ」
時計の針は昼食からだいぶ過ぎた時間を指していた。窓の外に見える太陽も東に傾き、辺りを橙色に染めている。
『誰も呼びに来なかったんですけど…』
「今日は全員用事があったからな」
工房に入った後、リヴァイは車椅子に座ったまま後ろ手でそっと扉の鍵を閉めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わたがし(プロフ) - moguさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！好みに合っていたようで光栄です！この作品を書いた甲斐がありました。尺の都合で省略した箇所を集めたスピンオフ的なものを作る予定なので、楽しみにお待ちください！ (3月17日 20時) (
レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - はにみずさん» 最後までお付き合いありがとうございました！いつも温かいお言葉を送っていただいて、本当に、心の底から感謝しています！読者様のおかげで最後まで続けられました。進撃にハマるきっかけとなることができて嬉しく思います！ボードにも感想ありがとうございました！ (3月17日 18時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
mogu(プロフ) - 作者様、キャラ設定もストーリーも好みドンピシャ過ぎて、正直完結がとても寂しいですが、更新本当にお疲れ様でした！小説の内容をより理解する為アニメを全話見返し繰り返し読ませていただくほどこの作品が大好きです。これからも陰ながら応援しております。 (3月17日 18時) (レス) @page43 id: 22906dc04b (このIDを非表示/違反報告)
はにみず(プロフ) - 更新お疲れ様でした！物凄く感動しました！主人公ちゃんの純粋で真っ直ぐな思いがリヴァイさんの心を動かしていたことに感動して思わず泣きそうになりました！この作品を読んで進撃の巨人が更に好きになる切っ掛けになりました！最後に、これからも応援させて頂きます。 (3月15日 21時) (レス) id: a327b3fc09 (このIDを非表示/違反報告)
LIVI,LOVE - 作者様、私の作品作り始めましての設定だけ投稿しました！作者名は『コットンキャンディー』です！作品名は『兵士長の双子の妹も最強でした、、、』です！これから、アニメとマンガを見つつ、お話し作っていきます！ (3月2日 11時) (レス) id: 7441eb7b04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わたがし | 作成日時：2024年1月21日 10時
