第104話 開幕 ページ10
マーレに潜入してから数ヶ月、行方不明だったエレンから手紙が届くようになった。
エレンは収容区のエルディア人に変装し、ジークと接触し手を組んだ。収容区でエレンが巨人化して暴れ、我々はその援護をする、という計画が書かれていた。
決行日は世界でも有名なタイバー家がレベリオ収容区に世界の要人を集めてパラディ島への宣戦布告を行う日。
エレンとジークの計画が成功すれば、世界が団結してパラディ島へ攻め入るまでの時間稼ぎができるのだという。
今さらジークに全てを委ねるなんて…ヒストリアが犠牲になってもよくなったのだろうか。
作戦決行日、夜間奇襲用の黒い服を纏い、立体機動装置を取り付けていく。
マーレ軍との対人戦闘になるため新型の装置を使う。リヴァイとミカサは巨人との戦闘を想定してブレードを装備している。
初めての対人戦闘、これから起こるであろうことに装置を持つ手が震える。
「戸惑ってるの？人を殺すことに」
準備を終えたミカサが冷静に言った。
『…うん…自分が作ったもので誰かを殺すって思うと…なんだか……』
「躊躇してはダメ。やらないとやられるだけなんだから」
『そう…だよね…』
「Aの作った武器は確かに人を殺せるものだけど、それは同時に仲間を守るものでもある。武器がないと私たちは戦えない」
震える手をミカサは優しく包んでくれた。その上から、隣で聞いていたサシャの手がかぶさる。
「ミカサの言う通りですよ。さっさと終わらせて、みんなで帰ってご飯にしましょう！」
サシャらしい台詞に少し笑みが溢れる。もう、覚悟を決めなきゃいけない。
夜になった。レベリオ収容区に大勢の観客が集まっている。
我々は人の少ない建物や路地に隠れて、エレンからの合図があるまで待機する。
大きな音が鳴り響き、ステージに光が集まった。その中央でヴィリー・タイバーが恭しく頭を下げる。
幕が上がった。
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《現在公開可能な情報》
No.40
とある日、収容区内にある病院のベンチにて。
「それは写真…ですか？」
戦士候補生のファルコは、隣に座る男が眺めている一枚の紙を見て言った。
「ああ、家族の写真だ。どんな戦場にいようと、これだけは手放さないようにしてる」
「あれ？でも、家に帰りたくないって…」
「顔を合わせづらいってだけで、本当は大事なんだ…あいつらが…」
男は写真を見つめてわずかに目を細めた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
