【進撃の巨人】調査兵団の天才技術者 Vol.3 (ページ6)

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第100話　出航ページ6

マーレへと出発する日、普段は着ない高級なスーツに身を包み、調査兵団の9人は船に乗り込んだ。

この島から出る初めての船ということで、兵団関係者や義勇兵など大勢の人々が見送りに来ている。

その中にテクトンもいた。彼は悲しそうに笑って手を振り、自分もそれに応えて手を振り返す。

「彼と何かあったの？」

『うん…ちょっとね…』

隣に立つミカサに聞かれ、この前のことを思い出す。

テクトンからの告白を断った。自分と真剣に向き合ってくれた彼の想いに応えることができず泣きながら謝った。

それでもテクトンは、これからも同じ技術者の仲間として仲良くしたいと言ってくれた。

初めて会ったときとは真逆の言葉。私も、ここまで築き上げてきた関係を崩したくない。

そして帰り際に、もしマーレと戦うことがあれば、車力の巨人に気をつけろと忠告を受けた。

車力の背負う重機関銃という武器は立体機動の天敵となるらしい。

「この前帰ってきた時、目が腫れてたけど、まさかあの男に泣かされたんじゃ…⁉︎」

『違うよ。むしろ泣かせたのは私のほう』

「じゃあ、何があったの？」

『ようやく気付いた、自分の気持ちに…ミカサやハンジさんが私に気付かせてくれようとした意味がやっとわかった』

「ということは、まさか⁉︎」

『うん…私は、兵長のことが好き…恋愛的な意味で』

船が出発を告げる汽笛を鳴らし、港を出発した。

「よかった。何でも理屈で考えるAにもちゃんと人の心があって」

『さすがにそれはあるよ。ただ自分の気持ちが恋愛と結びついてなかっただけ。色々心配かけてごめんね』

「別に大丈夫。それで、兵長には気持ちを伝えるの？」

『伝えたい…けど、まだ言う勇気がない』

少し前までの自分なら、リヴァイ相手に《大好き》という言葉を平気で口にしていた。

なのに一度自覚してしまえば、恥ずかしくて面と向かって言えそうにない。

「Aにしては珍しい。早く言えばいいのに」

『そ、それはミカサもじゃないの…⁉︎早いとこエレンに伝えるべきだと思うよ』

「なっ…なんで…！」

2人して頬を赤らめ黙りこくる。今は夕日なんて出ていないのに。

船はゆっくりと進んでいき、もう島は見えなくなっていた。

これから行くマーレはどんな場所なのだろう。まだ知らない世界に胸を躍らせる。

潮風が熱くなった頬を優しく撫でていった。