第？？話 無念 ページ49
※スピンオフ
《ハンジside》
気がつくと地面に大の字に倒れていた。見えるのはよく晴れた青空と白い雲だけ。
「はっ！飛行艇は⁉︎」
ガバッと起き上がる。エレンの元へと向かう飛行艇を地鳴らしの巨人から守るための時間稼ぎをしたはずだ。
2本の雷槍と刃で何体もの超大型巨人の相手をし、巨人から発せられる高熱で自分の体が焼けていくところまでは覚えている。
その後、飛行艇がどうなったのかは確認できていない。
「飛び立ったよ」
横から懐かしい声がして振り向く。
「ハンジ、お前は役目を果たした」
そこにいたのはかつての仲間たち。エルヴィン、ミケやモブリット、サシャまでいる。
そうか、私は死んだんだな。
飛行艇が飛び立った後の青空から足元へと視線を落とした。差し出されたモブリットの手を借りて立ち上がる。
「まったく、団長になんか指名されたせいで大変だったよ。エレンのバカがさぁ…」
「ああ、大変だったな。ゆっくり聞くよ」
飛行艇を守るために心臓を捧げたことに悔いはない。あとのことは次代団長のアルミンに託した。彼らなら必ず地鳴らしを止めてくれる。
ただひとつ、心残りがあるとすれば…
「エレンのこともだけどさ、先にAとリヴァイの話をしてもいいかな？」
唯一の心残り。それは2人が結ばれる未来を見られなかったこと。
「ずっと誰かに話したくてうずうずしてたんだ。どうせみんなも聞きたいだろ？」
「ああ、ぜひお願いするよ」
再び青空を見上げて話し始めた。素直じゃない男と鈍感すぎる女。その2人の焦れったい恋模様を…
ーーーーーーーーーー
異変に気付いたのは、誕生日を祝うためにAに会いに行ったとき。
普段はめんどくさそうに腕組みをしているリヴァイが、この日は心なしか眉間の皺が薄くなっていたように見えた。
兵舎に帰ったらいつもの仏頂面に戻っていた。何だったんだあれは。
次にAに会ったのは壁が壊された後。
その日、Aはリヴァイに自分で発明した掃除機をプレゼントした。なんでも、誕生日に工具をくれたお礼ということらしい。
貰った掃除機を大事に抱えて帰るリヴァイは、家族や恋人に向けるような穏やかな目をしていた。
なるほど、いつの間にかリヴァイの中でAが大切な存在となっているんだな。
それが恋愛なのか家族愛なのかはわからない。
とにかく、Aの何かがリヴァイの心を動かした。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
