【進撃の巨人】調査兵団の天才技術者 Vol.3 (ページ48)

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第142話　結末ページ48

ふと頭に浮かんできた情景にゆっくりと目を開ける。

あれは記憶だ。実際にあったものではなく、“道”を通してした会話。

辺りを見回してみた。巨人のエレンとアルミンが戦っていた場所からは蒸気が上がっている。

そして、後ろを振り向いて驚いた。

巨人になったはずのエルディア人たちが人間の姿に戻っている。ここにいる全員、誰一人として巨人ではなくなっていた。

記憶の中のエレンは全てが終わった時に思い出すと言っていた。

その記憶が戻ったということはつまり、この世から巨人の力がなくなったということだ。

やはりあれがエレンとの最後の会話だったのか。目から一筋の涙が溢れ落ちた。

大声でガビを呼ぶファルコ。その向こうの岩陰にリヴァイはいた。

リヴァイの元へ行こうとして足が止まる。

リヴァイの目線の先、蒸気に紛れて人の姿が見えた気がした。あれはエルヴィンを始めとする散っていった仲間たちだ。

ハンジ、ミケ、モブリット、技術班の仲間から旧リヴァイ班のみんなまで。ここまでずっと、見ていてくれたんだ…

『エルヴィン…ハンジさん…みんな……全部、終わったよ…』

泣きながらポケットからエルヴィンのループタイを取り出し、両手できつく胸に押し当てる。

みんながいなければここまで来れなかった。みんなの捧げた心臓は決して無駄ではない。

『見ていてくれて、ありがとう…！』

エルヴィンたちは敬礼をしながら靄と共に消えていった。

ループタイを握り締めたままリヴァイに駆け寄り、感極まってその胸に飛び込んだ。

リヴァイは号泣する私の身体に無言で手を回す。そして優しい手つきで背中をさすった。

何度ジークを仕留め損ねたことか。エルヴィンとの約束から4年、ようやく最後の命令を遂行できた。リヴァイも心底胸を撫で下ろしているだろう。

落ち着いてから少し身体を離し、涙を拭いながらリヴァイと顔を見合わせた。

『あれ…兵長も泣いてる…？』

「泣いてねぇ…」

『でも涙が…』

「泣いてねぇって言ってんだろ」

後頭部を掴まれ少し乱暴にリヴァイの胸に顔を押し付けられる。まるで見るなとでも言うかのように。

胸から鼓動の音が聞こえる。ちゃんと生きてる。

互いに生き残れたことに安堵し、もう一度リヴァイの身体に腕を回した。まだ、伝えないといけないことが残っている。

二千年にも及ぶ争いが遂に幕を閉じた。

ようやく訪れたんだ。

私たちが待ち望んでいた、巨人のいない世界が…