第137話 奇跡 ページ43
アニに引き上げられた先は巨大な鳥の背中。改造した対巨人ライフルを持ったガビも乗っている。
そしてこれは鳥ではなく巨人化したファルコ。ジークの脊髄液を通して巨人になったファルコは、顎の他に獣の力の一部も使えるようになったらしい。
巨人が空を飛ぶ。こんな奇跡は二度とない。
『ジャンとライナー、装置壊れてるんでしょ？直すから貸して』
「は⁉︎状況考えろよ！こんな場所で直せるわけねぇだろ！」
「それにお前、腕から血が…」
『両方を完璧には直せない。でも、ライナーの部品を使ったら、ジャンのだけならなんとか直せる』
羽織っていたマントを破って腕に巻きつけ止血した。まだ痛みはあるが修理くらいなら動かせる。
この状況下、2人とも装置が壊れたままよりは、巨人になれるライナーの装置を犠牲にしてジャンの方を使えるようにするのが合理的だ。
『私は飛行艇に乗ってから何一つ役に立ってない。だから、今は私にしかできないことをさせて！技術者としての役割を果たしたい！』
納得してくれたのか、2人は大人しく装置を渡してくれた。
いつも持ち歩いている携帯用の工具箱を取り出し、落ちないよう注意しながら修理をしていく。
その間にリヴァイが作戦を立てた。二班に分かれ、一方でアルミンを救助し、もう一方で爆弾が巻いてあるうなじを狙う。
エレンを殺すことにまだ躊躇しているミカサにジャンが震える声を絞り出した。
「…エレンを………殺そう…」
呆然とするミカサ。ジャンも他の皆も、エレンを殺したいだなんて本気で思っていない。
だがもう、我々にはこれしか手が残されていない。迷いを捨ててやるしかない。
ガビが言うには、エレンの首を刎ねた時に背骨から光るムカデのようなものが飛び出てきて首と繋がったらしい。
もしそれが巨人の正体だとしたら、また首を落とせば出てくるかもしれない。
その話を聞きながら修理を終わらせ、装置をジャンに渡した。ちょうどスラトア要塞の上空を通過したあたりだ。
歴代の戦鎚が放つ弓矢を避けながらファルコが速度を上げて始祖に近付く。ジャンとライナーと共にファルコから飛び降りた。
「A…絶対に、死ぬなよ…」
始祖へと降りていく私に向かって、リヴァイは祈るように言葉を送る。
空中で巨人化したライナーが戦鎚を引きつける。その間にジャンが起爆装置へ、自分はピークを助けに頭骨へと向かう。
だが、またも多数の巨人に阻まれて前に進めない。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
