第133話 座標 ページ39
ハンジを失ったことに皆が呆然とし、機内では重苦しい空気が漂っている。
新たに団長を任されたアルミンがオニャンコポンとの話を終え、落ち込む皆に向き合った。
「じゃあ、作戦を話し合おう」
アルミンが飛行艇の床にチョークで始祖の絵を描き、エレンがどこにいてどう探し出すのかの話し合いを始めた。
だが、ハンジを亡くしたショックでとても会話ができる状態ではない私は座ったまま項垂れている。皆の会話も右から左へと流れていく。
みんなもそんな私の様子を見て心中を察し、そっとしておいてくれた。
エレンは我々がどうするのかを試しているのではないか、とアルミンは予想。ライナーも、自分だったら誰かの手で終わりにしてほしいと話す。
すると突然、青白い世界へと引き込まれた。
足に力が入らず地面に尻もちをつく。この空間へは一度来たことがある。地鳴らしが発動した時に見た白昼夢と同じ場所。
アルミンが大声でエレンへと話しかける。ジャンやミカサたちもエレンに語りかけるが返事はない。
少しして、どこからかエレンの声が聞こえてきた。
《地鳴らしは止まらない。パラディ島の未来を運に任せて放棄することもない。俺は進み続ける。》
エレンの声のあと、リヴァイが何かに気付き指を差した。そこへ目を向けると、光る巨大な木のようなものの前に誰かが立っているのが見える。
あれはエレンだ。ミカサを先頭にアルミン、ジャン、コニーがエレンの方へと走り出した。
「お前は行かなくていいのか？」
『……行きたいけど…立てない…』
「いつまでも引きずってんじゃねぇ。俺らにはまだやることが残ってんだろ」
座ったままミカサたちが走って行った方をぼうっと眺める。私だって、エレンを連れ戻したい。
リヴァイも同じように地面に座った。
「そうやってうじうじしてても何も変わらねぇ。あいつの捧げた心臓を無駄にしないためにも、さっさと気持ち切り替えろ」
『……はい…』
リヴァイに諭され小さく返事をする。その時、またエレンの声が聞こえてきた。
《俺は自由を手に入れるため、世界から自由を奪う。だが、お前らからは何も奪わない。お前たちは自由だ。》
後ろから誰かが走ってくる音がした。振り返ると、どういうことか、エレンの方へと走って行ったミカサたちが同じ場所に戻ってきていた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
