第132話 使命 ページ38
アルミンを第15代調査兵団団長に任命すると言うハンジ。それが何を意味するのか、理解するのに時間はかからなかった。
アルミンたちに笑顔で「じゃあね」と告げたハンジはそのままこちらに歩いてきた。
「A、最後まで一緒にいてあげられなくてごめんね。これが私の、団長としての責務だから」
『……ダメ…だよ…ハンジさん…』
ハンジは私の身体を抱きしめ、いつものように優しく頭を撫でてくれた。
「Aは本当に素直で良い子だね。私の巨人の話を嫌な顔せずに聞いてくれて嬉しかったよ。ありがとう。私にとっても、Aは可愛い妹だ」
ハンジの胸に抱かれ、目から涙が溢れ出てくる。自由の翼が刺繍されたハンジのマントをギュッと握りしめた。
『……嫌…行かないで……一緒にいて…』
「心配ないさ、私はどこにも行かないよ。Aのこと見てるから、ずっと。だから…」
より強く抱きしめられ、ハンジは耳元で真剣な声で呟いた。
「私の望んでる未来を必ず叶えてくれ」
ゆっくりと身体を離し、放心状態の私を置いてリヴァイの方へと向き直った。
「…おい、クソメガネ…」
「わかるだろリヴァイ。ようやく来たって感じだ。私の番が…今最高にかっこつけたい気分なんだよ。このまま行かせてくれ」
少し間をあけてから、リヴァイは拳をハンジの胸へと強く押し当てる。
「心臓を捧げよ」
「ハハッ、君が言ってんの初めて聞いたよ」
壁にアンカーを刺し、ハンジは大量の巨人の群れへと飛んで行った。
『待って…！ハンジさん！！』
泣き叫びながらハンジを追いかけようとするもリヴァイに止められる。
その場に膝を着いて泣き崩れた。自分には、ハンジが巨人と戦う様子をただ眺めることしかできない。
ハンジは先頭を歩く巨人のうなじに雷槍を撃ち込んで倒し、後ろを歩く巨人はそれに躓き連なって転倒していく。
「エンジンをかけろ！機体を前に押すんだ！」
整備が終わった飛行艇をジャンやライナーが押していき、泣き崩れる私をミカサとピークが引きずって飛行艇に乗せた。
間一髪。格納庫から海へと水面を走るように進む飛行艇。
その窓から見えたのは、炎に包まれながら地上へと落ちていくハンジの姿だった。
「離陸する！掴まれ！」
機体の揺れに合わせて力なく座席へと身体を預ける。
「…じゃあな、ハンジ。見ててくれ…」
隣に座るリヴァイが小さく呟いた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
