第130話 頭痛 ページ36
夜になりオディハの港に到着した。ここは地鳴らしが通るルートであるため、オディハの住民はすでに逃げて街は閑散としている。
飛行艇を格納庫に上げ、ヒィズルの技術者たちが飛行艇の整備をしていく。
本当は飛行艇について事細かに教えてもらいたいところだが、今はそんなことをしている場合ではない。一刻も早く飛び立たせないといけない。
大人しく格納庫の隅でライナーの立体機動装置を新型から旧型に作り変えている。新型はまだ慣れずに飛びにくいらしい。
そこへミカサがやって来た。
「アニは飛行艇には乗らないらしい。もう戦えないって」
『わかった。アニの分の装置は何かに使うかもしれないから、そこに置いといて』
装置の入った木箱を置いた後、ミカサは気まずそうに隣に座った。
「…Aに、聞きたいことがあるんだけど…」
『何？』
「頭痛…したことある？突発性の…」
『あー…うん、あるよ』
ミカサは驚いて目を開く。何かよくない衝撃を受けたような、そんな表情だった。
「…どんなときに頭痛が起こる？」
『夜遅くまで作業してるときとか、徹夜したあとはよく頭痛くなる。でも寝たら治るよ』
「それは、ただの寝不足だと思う」
『違うの？』
ミカサによると、力に目覚めたアッカーマンは突発性の頭痛を起こすことがあり、それは本来の自分が宿主の護衛を強いられることに抵抗を覚えることで起きるのだと。
エレンがミカサにそう言ったらしい。
『私の宿主は…たぶんエルヴィン。でも、エルヴィンが生きてた頃もそういう頭痛はなかったよ』
「そう…兵長は？」
『兵長の宿主もエルヴィンだと思うけど、昔から頭痛がしている様子は見たことないかな』
「じゃあ、何で私だけ…」
ミカサは頭を押さえて俯いた。
『アッカーマン3人中2人が頭痛を経験してないから、エレンが言ったことは嘘である可能性が高い。何か理由があって言ったんじゃない？』
「アルミンもそう言ってたけど、エレンが…私を…嫌いだって…」
泣きそうな顔のミカサ。好きな人から嫌いだと言われることがどれほど辛いか、今の自分にはわかる。
自分もリヴァイから嫌いだなんて言われたら、とても耐えられない。
『大丈夫だよ。鈍感な私から見ても、エレンはミカサのこと嫌いだなんて素ぶり見せてなかったよ』
なんとか慰めようとするも、良い言葉が見つからずミカサは落ち込んだまま。
工具を置き、そっとミカサの背中を撫でた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
