第128話 好奇 ページ34
今現在も世界中で多くの人が踏み潰されているなんて思えないほどの綺麗な空と海。心地よい潮風が2人の髪をなびかせる。
『…痛かった？雷槍…レベリオで受けたときの…』
「まぁ、うん、痛かった。パンツァー隊の仲間も死んじゃったし」
『ごめんね…あの作戦考えたの私なの。雷槍作ったのも私』
レベリオ襲撃時、自ら作戦を立て車力を壊滅寸前まで追い詰めた。それがまさか、こうして仲間として話すようになるなんて誰が想像できただろうか。
『投石で兄を殺したジークのことが嫌いだったけど、自分だって同じことをしてたんだって気付いた。誰かにとっての大事な人を殺してた』
「それは私も同じ。歴史や環境がそうさせてるだけだから、あなただけが気に病むことじゃない」
『ありがと。そもそも文明なんてなかったら、戦争は起こらなかったのにね』
「そのためにエレンは地鳴らししてるんでしょ？島を守るために、文明ごと破壊してる」
『うん。だけど私は、文明を破壊されたくない。まだ自分の知らない世界の技術がなくなってしまうのは嫌。だから地鳴らしを止めたい』
ずっと壁の中で生きていたから、壁内の技術しか知らなかった。
壁外にも人がいることがわかり、壁内よりも高度な技術を持っていると知って感動した。
マーレやヒィズルの技術を学んでいくうちに、世界にはまだ自分の知らない技術がたくさんあると知り、それらをもっと学びたいと思った。
世界の技術の全てが知りたい。今まで人類が何百、何千年も努力を積み重ねて発展させてきた科学技術を守りたい。
『私はまだ、車を分解できていないし飛行船が飛ぶ仕組みも理解できてない。何も知らないまま文明が壊されるなんて、じっとしていられない』
「フフ、あなたって面白いのね。興味わいてきちゃった」
黙って話を聞いていたピークは私を見て微笑んだ。
「あ、A、ここにいたのか。探したぜ」
後ろから声がして振り返る。甲板に続くドアからテクトンがやって来た。
『何か用ですか？』
「いや、用っていうか、ただお前と話そうと思って…」
何か言いづらそうにしているテクトンに、ピークは私の肩に手を置いて挑発するような視線を送る。
「ごめーん、Aは今私と話してるからあなたは後にして。女同士の大事な会話を聞きたいっていうなら別だけど」
「ああそうかよ、邪魔したな」
テクトンは元来た方へと戻り、ドアをバタンと閉めた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
