第123話 覚悟 ページ29
「A、お前も戦わなくていいんだぞ⁉︎」
改造する手を止めてライナーの方に顔を向けた。
『大丈夫。私は同期の顔とか覚えてないし、イェーガー派もすでに2人殺した。あとは何人殺そうが同じでしょ？』
「いやそれ殺人者の論理…」
『それに、巨大樹の森で20人以上殺した。巨人の姿だったけど、確かに仲間をこの手で殺した。もう覚悟はできてるよ』
ここ数日で何人もの仲間を殺した。今さら無理だなんて言ってられない。
それに、港にいるヒィズルの技術者には多くの技術を教えてもらった。お世話になった人々を守るためにも、私は戦いたい。
ハンジも共に戦うと言い、マガトは自らの態度を詫びて頭を下げた。愚かな行いに目を瞑ってくれと。
「断ります。手も汚さず正しくあろうとするなんて」
アルミンは静かに答えた。みんな覚悟を決めたようだ。
ーーーーーーーーーー
アズマビトの屋敷にて、フロックは機嫌良く窓の外に見える蒸気を眺めている。
キヨミの前には殺された部下の死体が転がり、技術者たちは次は自分かと怯えている。
「これでパラディ島は安泰だとお考えのようでしたら、お気の毒に…ただ世間が狭くなるだけのことです。何も変わらず同様の殺し合いを繰り返すことでしょう」
「ご忠告痛み入ります。確かにそのような気がしてきました。大事なのは身の程をわきまえることでしょう」
フロックはキヨミの頭に銃口を突きつけた。
「ヒィズルの技術など必要ない。飛行艇も航海術も我々の身の丈に合わない代物だと欲を断てば、不安の種は摘める」
銃口を向けながら、フロックは怯える技術者を一瞥する。
「いや、Aが一人いれば十分か。今は行方不明だが、必ず探し出して島の発展に貢献させる」
「おい、A一人に働かせるつもりなのか⁉︎」
一人の技術者がフロックに反論した。それはヒィズルの技術を学びに来ていたテクトンだった。
「働かせるとは人聞きの悪い。Aは根っからの技術好きだ。自分から楽しんで島を発展させてくれますよ」
「その発展させるってのがどれだけ大変なことかわかってねぇだろ！」
「どれだけ大変でも、技術好きのAなら身を粉にしてでも必ず成し遂げる。あなた方とは違う。それが技術者の本来あるべき姿だ」
「テメェが技術者を語んじゃねぇよ！」
激昂したテクトンが立ち上がる。フロックがテクトンに銃を向けた時、外からアルミンの呼ぶ声が聞こえた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
