第122話 指摘 ページ28
森で一晩過ごし朝になった。みんなで出発の準備をしていく。
アニから荷物を受け取り荷台に乗せているとき、アニからの視線を感じた。
『えっと…A・スミスです。アニさんとは違う訓練兵団でしたが、104期調査兵で、一応技術班の班長をしています』
「うん、知ってる。あと敬語もいらない。呼び捨てでいい」
水晶体のアニとは会ったことがあるが、実際にきちんと話すのは初めて。
『なんで私のこと知ってるの？』
「ヒッチから聞いた。同じ訓練所に、男に全く興味のない機械バカがいたってね。脳みそまで機械でできてる鈍感な奴って言ってたよ」
『へぇ、そんな風に思われてたんだ。男というより、人間に興味がないんだけどな』
「その割には、あの兵長には興味がないようには見えなかったけど？」
アニからの指摘に心臓がドクッと鳴る。おそらく昨夜のあれを見て気付かれたのだろう。
リヴァイへの好意はジークにも見抜かれていた。自分が思っている以上に、私は顔に出やすいらしい。
『……あの人は…特別、だから…』
「人類最強の兵長も恋愛とかするんだね」
『ち、違う…私が一方的に想ってるだけ…』
「あんた…本当に鈍感な奴だね」
アニは驚いたように私を見て言った。
出発の時間になり、港へ向けて馬車を走らせる。港にいるアズマビトの所有する飛行艇でエレンのいる始祖まで行こうという計画だ。
馬車の荷台で全員の立体機動装置の整備をしていると、偵察に向かった車力が帰ってきた。
機関車で先回りしたイェーガー派に港を占拠され、戦闘体勢の兵士が多くいるという。
港が一望できる岩場から状況を確認する。地鳴らし後の世界で必要となるため、飛行艇はまだ壊されていない。
飛行艇を飛び立たせるにはアズマビトの整備士が点検や飛行訓練をしなければならない。アズマビトを守りつつ整備する時間を確保する必要がある。
しかし、ジャンとコニーはイェーガー派からも死傷者を出したくないと言い、作戦が定まらない。
「お前たち5人は戦わなくていい。ガビとファルコと一緒に安全な所で見ていてくれ。イェーガー派に見つかれば、否が応でも選択を迫られるだろう。ただし、何も手出しするな」
ライナーは私たちにそう言った。ジャンとコニーはまだ葛藤している。
『私も、ライナーたちと一緒に戦うよ』
私の発言が意外だったのか、立体機動装置を改造している自分に全員が注目した。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
