第121話 疑心 ページ27
計画通りに事が進んだ。
ただ一つ予想外だったのは、眠っていたアニが目を覚ましアルミンたちと合流していたこと。
壁の硬質化が解かれたのと同時に、アニを包んでいた水晶体も解かれて外に投げ出されたらしい。
そして今、エレンの地鳴らしを止めるために調査兵団とマーレ戦士らが集結した。
「誰か手伝ってくれないかな。睨み合ってないでさ」
『あ、私が手伝います』
ハンジからナイフを受け取り、芋を切りながら上目でそっと周りの様子を見た。食事を作るハンジを挟んで両者は睨み合っている。
お互いに地鳴らしを止めたいという目的は同じだが、今まで殺し合った者同士、まだ完全に信用しきれていない。
シチューが完成し、一人ずつに配って回った。
さっきは少し話したがマガトは無言で受け取り、飛行船に乗り込んできた子ども2人は素直にお礼を言って受け取った。
『あ…ライナー…久しぶりだね……元気そうで何より…』
「…ああ、お前もな…」
ライナーは気まずそうに受け取り、次は初対面のアニに渡した。
『…アニさん…どうぞ…』
「……どうも…」
食事中も険悪な雰囲気は変わらず。
ライナーがマルコのことを謝っているとジャンがライナーを殴りだす。そして、そんなライナーを庇ってジャンの蹴りがガビのお腹に入った。
ガビはそのままうずくまりながら頭を下げて土下座する。大陸にいる家族を助けるために力を貸してくれと懇願した。
ファルコも一緒になって「お願いします」と頭を下げ続ける。その姿にジャンは何も言わずに一人で森の中へと消えていった。
一連の騒ぎで寝ていたリヴァイが目を覚ました。
『兵長、シチュー食べられますか？』
「ああ、なんとかな」
リヴァイの顔に巻かれた包帯を取った。縫い合わされた傷が痛々しい。右手も指が欠けて満足に物も掴めない。
『食べるの難しかったら、私が口まで運びましょうか？』
「これ以上無様な姿は見せられねぇだろ」
『怪我してるんだから誰もそんなこと思いませんよ。それに、こんな時くらい私を頼ってほしいです…』
少し間をあけてから、リヴァイは黙ってシチューの入った皿を突き出した。
スプーンで少しずつ口まで運んでいき、リヴァイは大人しくそれを食べていく。
これは私を頼ってくれた、ということでいいのだろうか。
こんなことができるのは私だけであってほしい。心の奥底でそう思ってしまう自分がいた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
