【進撃の巨人】調査兵団の天才技術者 Vol.3 (ページ20)

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第114話　不穏ページ20

一度キャンプ地に戻り、荷馬車にジークを乗せて巨大樹の森を出た。

森の近くを流れる川で顔を洗い少し休憩する。

その間にリヴァイはジークの腹に雷槍を刺し、信管を首に繋いで拘束した。

ジークが少しでも動けば雷槍が爆発し、ジークの体は真っ二つになる。そんな使い方は想定していないのだが。

「A、馬には乗れそうか？」

『はい、なんとか』

「悪いがこれからハンジのところへ報告に行ってくれ。獣のクソ髭面クズ野郎は敵だったってな」

『なんか増えてませんか？前は獣のクソ野郎だった気がします』

「増えて当然だ。こいつは仲間の命を弄びやがった。ワインに脊髄液を仕込ませてな。お前が律儀に未成年を貫いてくれたのが唯一の救いだ」

『私も…兵長がワインを飲んでなくてよかったです。兵長まで巨人になってたら、私は戦えませんでした』

私はきっと、巨人になったリヴァイを斬ることができない。戦意喪失して食べられて死んでいただろう。

「ワインのこともハンジに伝えろ。義勇兵があちこちにワインをばら撒いてるはずだ」

『わかりました』

「あと、イェーガー派とかいうやつらに出くわすかもしれねぇから銃を持っていけ」

『イェーガー派…？』

「ジークを信用するエレンに賛同してる奴らのことだ。ワインを持ってきた新兵ってのも奴らかもしれん。急ぐ必要はねぇから慎重に行け」

ライフルを背負い、馬に乗ってリヴァイと別れた。

馬に揺られながらワインのことを考える。あのワイン、どこで見たかを思い出した。

あれはテクトンに誘われてニコロのレストランに行った時だ。給仕の人が持って来たワインと同じだった。

やたらと私に勧めてきたのは、ジークの脊髄液入りだと知っていたから。

テクトンは…多分知らない。私が未成年を理由にワインを断ったときに何も言わなかった。

もし脊髄液入りだと知っていたら、これから告白する相手に変なものは飲ませまいと、給仕の人に何か言うはずだ。

マーレ人捕虜にも知ってる人と知らない人がいるということか。

きれいな夕焼けだった空がいつの間にか雲に覆われ、ポツリと雨が降ってきた。

マントのフードをかぶり、足早かつ慎重に馬を歩かせる。

静かな雨音の中、後ろの方で何かが爆発する音が微かに聞こえた。

『あれは雷槍の音…………まさかっ！』

嫌な予感がして手綱を強く引き、元来た道を全速力で駆けて戻った。

どうか、思い過ごしであってほしい…