第111話 嫉妬 ページ17
巨大樹の森に来て何日か経ったある日、立体機動装置の整備をしながら、ジークが語るラガコ村襲撃時の経緯を聞いていた。
あの日、マーレ軍はジークの脊髄液を含んだガスを風上から村へと流した。そのガスを吸ったユミルの民は直後に体が硬直し、意識を失う。
ほんのわずかでもジークの脊髄液が体内に入ると、ジークが叫ぶことによってそのユミルの民は巨人化してしまう。
「ーって、同じ話をこの島に上陸してすぐに話したよな？なぜ同じ話を何度も聞き返す？」
「お前が耳カスほどの罪悪感も覚えちゃいねぇことがよくわかる。本当にエルディアを救うつもりなのか知らねぇが、当の人命に興味がねぇことは確かだ」
「お前モテねぇだろ。勝手に人の気持ちをわかった気になるなよ」
「わかるさ…モテたことくらい……ある…」
リヴァイの言葉に工具を持つ手が止まる。モテたことがある…？それは初耳だ。
いや違う。自分が鈍感だったから気づかなかっただけで、実はリヴァイはかなりモテているのかもしれない。
リヴァイは見栄を張るような人ではない。確実にモテた経験があったんだ。
だとしたら、その人にも笑顔を見せたのだろうか。私だけが見ていたいと思っていたのに…
胸の奥にまたモヤモヤとしたものが流れてきた。
「なぁ、Aちゃん。実際のところ、リヴァイってモテてんの？」
『私は鈍感なのでよくわかりません。本人がそう言うのなら、モテてたんだと…思います…』
「ふーん…」
ジークは意味深な目で私を見ていた。
ーーーーーーーーーー
それから一月ほど経った。ジークの頭上には完全武装の兵士30名が囲んでいる。自分もリヴァイと交代でジークの監視に当たっている。
「Aちゃんってさ、リヴァイのこと好きだろ？」
学術書を読みながら監視していたとき、ジークが唐突に話しかけてきた。
『な、何でわかるんですか？』
「リヴァイと話すとき恋する乙女の顔してるなぁと思って。当たってた？」
リヴァイほどではないが、自分も表情は豊かな方ではない。それなのに気付かれていたとは…
恥ずかしくて答えられない。無言は肯定と捉えられる。
「そっかぁ、やっぱそうなのか。リヴァイのこと好きなのかぁ」
『あんまり言われると恥ずかしいです…！』
「ああ、ごめんね。でもリヴァイも不憫だよな、こんな若い女の子に俺の監視をさせるなんて」
隣に座るジークが私の顎に触れ、クイと上に傾けた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
