第110話 因縁 ページ16
パラディ島に帰還した数日後、サシャを含む今回の作戦で死亡した8人の兵士の葬儀が行われた。
エレンは単独行動をした罪で地下牢にいて不参加。ミカサをはじめとする同期4人は特に会話もなく暗い雰囲気。それは自分も含めて。
葬儀のあと、リヴァイと共に馬車に乗りある場所へと向かう。
「戦勝…と報じたわけか。恐ろしいね、何も知らないってのは」
前に座るメガネの男が窓の外を見て言った。
この男はジーク・イェーガー。獣の巨人の継承者であり、今回の作戦の首謀者。
まだ完全に信用できないため、ジークをエレンから離れた場所に拘束する。リヴァイはその監視役だ。
本来ならリヴァイ一人でよかったのだが、ジークは自分にとっても因縁の相手。無理を言って同行させてもらった。
リヴァイはジークを睨み、ジークもどこか本心を隠している様子。馬車の中は険悪な雰囲気が流れている。
「なぁ？睨むのやめてくれないか？嬢ちゃんからも言ってやってくれよ。そんなに睨んだら眉間の皺が取れないぞって」
『…兵長は元からそんな目つきです。それに、私もあなたのことは嫌いです』
「えぇ⁉︎俺なんかした⁉︎初対面…だよね⁉︎生理的に無理とかそういう感じ？」
『…4年前、あなたは私の兄を殺しました。先陣を切って走る私の大事な兄に、たくさんの大きな岩を投げつけて……』
俯いて膝の上で拳を握る。ジークは察したのか黙って目を伏せた。
「あぁ、あの戦いね。先頭走ってたのお兄ちゃんだったのか…そうか、悪かったよ」
「悪かったで済むと思ってんのか？こいつの兄だけじゃねぇ。多くの仲間がお前の投げた石つぶてで命を落とした」
「あの時はああするしかなかったんだよ。戦士としての立場だってあるし、わかるだろ？」
「ああするしかなかっただと⁉︎その割には随分と楽しそうだったがな」
「だからあれは…」
『もう、いいです…』
私の言葉に2人は口を止めた。
『今更何言ったって兄は戻ってこないから。でも、あなたが嫌いなことに変わりはないので、信用はしてません。』
「嬢ちゃんの方がよっぽど大人だな」
リヴァイは舌打ちをしてジークを睨み続けた。
馬車を降り、荷馬車にジークを乗せて巨大樹の森までやって来た。
この場所なら立体機動が使いやすい。ジークがいつ巨人化しようともすぐに対応できる。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
