第108話 凶弾 ページ14
飛行船を操縦するのはオニャンコポン。屋上に設置した光の道に沿って進み我々を回収する。
地上から銃を放つマーレ兵に攻撃しながら飛行船にアンカーを伸ばし登っていく。
飛行船の扉に着くとフロックが手を貸してくれた。
「Aの作戦、大成功だったな。あの機関銃の弱点をあぶり出せたのは、Aの技術者からの視点があったからだよ」
『ありがとう。それにしても、あんなに強力な武器を開発するなんて、考えた人はすごいなぁ。すごく興味ある』
飛行船の後ろの方へゆっくり歩いていき、一人で端に座り込む。
人がたくさん死んだ。敵を何人も撃ち殺した。自分の考えた作戦で命を落とした兵士もいるだろうに、素直に勝利を喜べない。
コニーとサシャが飛行船に乗り、少し遅れてジャンが登ってきた。
フロックたちは新生エルディア帝国の大勝利、と大声で喜び合っている。
「とりあえず、俺達はまた生き残った。他の仲間にはわりぃけど、やっぱりお前らは特別だよ、俺は…」
コニーがジャンとサシャの肩を抱き寄せた。
「Aも、今回は怪我もなく帰ってこられてよかったぜ」
『……うん…』
「元気ねぇな。Aは人と戦うの初めてだったから落ち込んでんのか？」
ジャンたちに顔を伏せ、飛行船の床を優しく撫でた。
『空気より軽いガスを使ってるとは言え、これだけの人数を乗せた鉄の塊が空を飛ぶなんて、やっぱりまだ原理がよくわからない。また設計図を見せてもらわないと』
「あ、大丈夫。いつも通りだ」
最後のライマ班が乗り込んでからしばらくして、サシャが物音に気付いた。
フロックたちの喜びの声で音は聞こえなかったが、床に座っている自分にも、何かが飛行船にぶつかる衝撃を感じた。
扉からライフルを持った女の子が転がり込んできた。女の子はすぐさま銃を構え、引き金を引いた。
弾は真っ直ぐにサシャの脇腹に着弾。サシャは鈍い音を立てて床に倒れた。
『…え……サシャ…？』
もう一発撃とうとする女の子にジャンが銃口を向ける。
お互いが引き金を引く寸前、今度は男の子が乗り込んできて女の子を押し倒した。両者とも間一髪のところで弾がそれる。
フロックたちが乗り込んできた子ども2人に殴りかかる。それを無視して通り過ぎ、倒れるサシャに駆け寄った。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
