第96話 夕日 ページ2
ハンジの出した提案とは、マーレに拠点を設けて潜入調査をするというもの。
そこで実情を調査して世界を知り、我々が平和を望んでいることを世界が知れば、何かが変わるかもしれない。
ハンジとリヴァイが帰った後、日が傾く頃まで作業し、機関車の荷台に乗って帰路についた。
機関車の操縦をしたい気持ちはやまやまなのだが、久々に体を使ったことによる筋肉痛で動けず、操縦はアルミンに任せた。
初めて島を出ることにみんなは胸を弾ませている。そんな中、エレンが静かに話し始めた。
「もう少し…時間があればな…ジークの寿命はあと2年もない。俺は5年と少し…そろそろ決めなきゃいけない。俺の巨人の継承者を」
エレンは意を決した顔で私たちを見つめた。
「私が引き継ぐ」
ミカサが真っ先に答えた。だが、それをジャンが拒否し、優秀な自分が引き継ぐと言った。
優秀なジャンを13年で死なせるわけにはいかないと今度はコニーが引き継ぐと言う。
さらにそのコニーに、バカには任せられないとサシャが言い張る。そんなサシャにコニーは言ってることが矛盾してると指摘した。
『じゃあ、私が引き継ぐ。元から獣を継承する覚悟はできてたし、みんなダメな理由があるなら私が』
「いやいやいや、お前だってダメだろ！Aがいなきゃこの島は衰退しちまう」
「それに、Aが13年で死んでしまったら、兵長が悲しむ」
なぜ悲しむのがリヴァイなのかわからないけど、確かにこの島の発展を置いて死ぬわけにはいかない。
「俺はお前らに継承させるつもりはない」
「何でだ？」
「お前らが大事だからだ。他の誰よりも…だから、長生きしてほしい」
みんなは顔を赤らめて気まずそうに黙り込む。しばしの沈黙の中、ジャンが横目でチラリとエレンを見た。
「は⁉︎てめぇ何赤くなってんだ⁉︎どうすんだよこの空気をよぉ⁉︎」
「……すまん…」
同じように赤くなっているエレン。前にもこんなことがあったのを思い出す。
『私もみんなのこと大好きだから、長生きしてずっと一緒にいたい』
「おい！追い討ちかけんな！しかも何でお前はそんな澄ました顔でいられるんだよ⁉︎」
『思ってること言っただけだよ？ジャンは何で赤くなってるの？』
「っは⁉︎知るかよ！てか空気読めよ！」
「夕日のせいだよ…みんな赤くなってるからさ…」
同じように顔を赤くしているアルミン。機関車の進む先にあるのは、真っ赤に燃える夕日だった。
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年12月14日 17時
