第56話 懐古 ページ7
それから、非番のたびにハンジたちが会いに来てくれるようになった。
兄が仕事で帰ってこられない時でも、誰かしらは家に来てくれる。
初めのうちは緊張して上手く話せなかったが、しっかりと自分の話を聞いてくれる彼らとだんだん打ち解けていった。
とある日、リヴァイが家に訪ねてきた。普段は誰かと来るのにこの日は1人。
「なんで俺が来たのかって顔してるな」
『…あ、はい。』
「エルヴィンからお前の様子を見てこいと命令されて来た。他の奴は用事があって来れねぇらしいからな」
リヴァイを家に入れた。来てくれたのは嬉しいが、彼とはあまり話したことがなくて気まずい。
「掃除してたのか？」
『…はい。今日はお母さんが仕事なので、代わりに私がやろうと思って…』
リヴァイは机の下の部分を手のひらでスッと撫で、険しい表情を浮かべた。
「全然なってない。全てやり直せ」
『えっ、全て…？』
「お前に掃除の基礎を叩き込んでやる」
家中の窓を開け放し、マスクと三角巾を付けて2人で掃除を始めた。
話し方は無愛想だが、掃除のやり方を一つ一つ丁寧に教えてくれる。手の届かない場所も代わりにやってくれた。
リヴァイに対して初めに抱いた怖いという印象はなくなり、距離が縮まったように感じる。
兄の言っていたことがわかった。リヴァイは掃除について、ハンジは巨人について、ミケや他の人も自分の知らないことをたくさん教えてくれる。
本以外からでも学べるものがあると知った。
10歳になった。
誕生日当日ではなかったが、ハンジたちが家に来て本やお菓子などプレゼントをたくさんくれた。
その日の帰り際、リヴァイから包みを渡された。中に入っていたのは欲しかった工具。
『あの…リヴァイさん、これ、すごく高かったんじゃ…』
「値段は関係ねぇ。それが欲しかったんだろ」
『でも…』
「ガキが一丁前に遠慮するんじゃねぇ。貰えるものは貰っておけ」
この工具は珍しい金属でできていてとても高い。自分のお小遣いでは到底買うことができないほど高価なものだった。
それでもどうしても欲しくて、他のものを我慢してお金を貯め続けていた。
このことをリヴァイに言った覚えはない。なぜ知っていたのかは未だにわからない。でもとにかく嬉しかった。
『リヴァイさん、ありがとうございます！』
お礼を言うと、リヴァイは何も言わず私の頭をクシャクシャと撫でて帰っていった。
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わたがし(プロフ) - レナさん» ご指摘ありがとうございます！原作第106話「義勇兵」にて、マーレの兵士が『穢れた血』と表現していましたので、それをそのまま使用しました。紛らわしくて申し訳ありません。『島の悪魔』の方がわかりやすかったですね（汗） (12月7日 12時) (
レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - すごく面白いです！訂正をしていいのか分かりませんが、85話の話で出てくる穢れた血ではなく、島の悪魔なのではないでしょうか？ (12月7日 9時) (レス) @page41 id: f9e6be770b (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - 琴さん» 最高だなんて嬉しいお言葉、ありがとうございます！不定期な更新ですが、今後ともよろしくお願いします！ (11月27日 14時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - もう最高に面白いです！更新頑張ってください！ (11月26日 10時) (レス) @page33 id: e939615bba (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - きぬさん» コメントありがとうございます！まだまだ続きますので、今後も楽しんでいってください！ (11月20日 17時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年11月2日 12時
