第80話 失敗 ページ36
エレンの父・グリシャ氏の残した手記に出てくる「写真」というものを知ってから半年ほど。
どれだけ実験を繰り返しても一向に写真が出来上がらない。
写真を焼き付ける紙が違うのか、はたまた写真を作る機械の原理が間違っているのか、それすらもわからない。
海の向こうの人たちは高度な技術を持っているんだなと感心してしまう。
写真を作るにあたってもう一つ問題がある。それは費用問題。
この写真を作るというのは個人的な趣味の範囲でやっているものであり、調査兵団の技術開発用の資金を使うことはできない。
つまり、全て自費で行っている。給与は貰っているが、やはり出費は激しくそろそろ貯金が底をつきそうだ。
今日も工房で1人、実験結果を見ながら頭をひねらせている。
「大丈夫か？」
突然声をかけられ、ハッとして顔を上げる。そこにいたのはお盆を持ったエレンだった。
『エレン、どうしたの？』
「Aが晩飯食べてねぇから持って行けって、兵長とハンジさんから言われて」
『そっか、もうそんな時間なんだ』
「ああ、牛乳も持って来た」
『あはは、わざわざありがとう』
晩ご飯を乗せたお盆を机に置いて、エレンは隣に座った。作業を中断し、持って来てくれた食事に手をつける。
「写真の開発、大変そうだな」
『うん、今までで一番時間かかってるかも。でも楽しいから全然辛くないよ』
「Aは何で諦めないんだ？なかなか思い通りにいかねぇし、実験だって何回も失敗してるのに、何で楽しいって思えるんだ？」
難しい質問。自分にとって何か新しいものを作ることは日常生活の一部のようなもので、何か特別な理由があるわけではない。
『新しいことを知ったり考えたりすることが好きだから、かな？実験の結果を見て何で失敗したんだろうって考えちゃう』
「失敗しても落ち込まねぇのか？」
『そりゃ落ち込むよ。でも、落ち込むだけじゃ何も進まないし、失敗から気付かされることもある。失敗は成功に繋がる重要なデータだからね』
「だからどれだけ失敗しても諦めねぇってわけか」
『私の場合、諦めないより諦めが悪いって言い方の方が合ってるかも。図面上のイメージを何としてでも現実にしたい』
「やっぱAはすげぇよ。アルミンとはまた違った頭の良さだな」
エレンは少し笑って言った。そういえば、エレンと初めて話したときも私のことを凄いと褒めてくれた。
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わたがし(プロフ) - レナさん» ご指摘ありがとうございます！原作第106話「義勇兵」にて、マーレの兵士が『穢れた血』と表現していましたので、それをそのまま使用しました。紛らわしくて申し訳ありません。『島の悪魔』の方がわかりやすかったですね（汗） (12月7日 12時) (
レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - すごく面白いです！訂正をしていいのか分かりませんが、85話の話で出てくる穢れた血ではなく、島の悪魔なのではないでしょうか？ (12月7日 9時) (レス) @page41 id: f9e6be770b (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - 琴さん» 最高だなんて嬉しいお言葉、ありがとうございます！不定期な更新ですが、今後ともよろしくお願いします！ (11月27日 14時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - もう最高に面白いです！更新頑張ってください！ (11月26日 10時) (レス) @page33 id: e939615bba (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - きぬさん» コメントありがとうございます！まだまだ続きますので、今後も楽しんでいってください！ (11月20日 17時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年11月2日 12時
