SPARC

刹那な思い （k） ページ11

「藤ヶ谷……あのさ！」

『……ん。なに？』
少し……そっけない返事に
落ち込む事も少なくなって……

それでも…ひるむ時がある
それさえも上手に隠す自分に
心の中で苦笑いするのも茶飯事だ。

「コレ。この前…お前が…買い取りたいって言ってたストール……」

『あ！まじ？！サンキュ！いくらだった？立て替えてくれたんでしょ？』

「……ん〜〜。いいよ。あげる」

『え？何で？』

「……お前誕生日近いじゃん。……俺、直ぐに忘れちゃうからさ！あげる！少し早いけど……誕生日プレゼント！happybirthday……太輔！」

どさくさに紛れて
名前を呼んでみる……

そんな些細な事でさえ
初恋みたいにトキメクんだから
始末に終えないな……

素直になれない自分……
素直になれない状況……

恐る恐る
藤ヶ谷の顔色をうかがうみたいに
身体中の神経は
彼に向けられている
いきなり名前で呼ぶなんて
図々し過ぎたかな？……

『ありがとう！マジ嬉しいわ！サンキュ♪……えっと…宏光！』

「……え？！」

名前で呼び返されて
すっとんきょうな声が出た

『北山に名前呼びされんの……新鮮だったから！
俺も！……………なんか！こそばゆい！！！』

昔……
俺にも見せてくれた
あの悪戯っ子みたいな笑顔…

あんまり嬉しくて
俺もつい……
ニヘッと笑ってしまった……


『……北山…………』

「え？何？！」
いかんいかん！気を引き締める

『……ぁ。何でもない……ありがとな！大事に使うよ！』

ああ……こういう時の
最後の一言がいちいちイケメンなんだよなぁ……

「どういたしまして。そう言ってもらえると嬉しいよ！」

久々に二人きりで
何気ない会話をしたのが
ホントに嬉しかった

いつもは

「はよ！」
『ん……おはよー』
って言ったら
それぞれにイヤホン掛けて
おのおの雑誌を読んだり目を閉じたり……

だから……
そんな時間も……
他のメンバーがドヤドヤと集合してきて終了。
まぁ……来なきゃ困る時間なんだけどね……

ちょっぴりガッカリして
思わず唇を尖らせちゃったよ……

ははは……

今度は急に寂しくなった……

藤ヶ谷が俺のあげたスカーフを
大事そうに鞄の奥に
しまってくれてる姿に

またチョット嬉しかったり……

今日の俺はなんかおかしい
胸の奥のシュワシュワが
小さなため息を誘う……

ニカが
フワッと抱きついてきて
【……みつ……】って
アイツらしくなく
優しく俺を呼んだ

「なに？どした？」
頭を撫でると
更にキュッと抱きついてきた

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