317 ページ17
まばらに散る星がキラキラと輝いている
何かと似ている気がして首を傾げ
ぼんやりしている私の服の袖を引っ張った鬱さんに我に返った
「…そろそろ、行こうか」
時刻は日付を跨ぐ1時間前を切った
随分と長い間話していたようで
彼の言葉に頷いて、震え始めた足を無理矢理動かした
……彼らの中から私が消える
そう考えると、辛くなる
幹部たちは誰一人廊下にはいなくて
静まり返ったこのお城を歩き続けた
つい最近起きたばかりの出来事でさえ、懐かしいと思ってしまう
廊下で迷子になったり
お茶会も沢山した
図書室でこの国の話を聞いたり
逃走したグルッペンさんの隠れ場所を見つけた時はすごく嬉しかったなぁ
夜だから今はちゃんと見えないが、中庭も凄く素敵な場所だった
何よりも
私の名前を、あんなに暖かく呼んでくれる人達が沢山いて
「Aちゃん…？」
『……鬱さん、私…ここに来れて良かったです』
「…え？」
『幸せがこんなに沢山ある場所…そうそうないですから』
夜空を見て中庭を歩き
門の前に足を止めて、深呼吸をする
……ここを、またげば
もう戻れない
『…大丈夫』
「っ、A、ちゃ「「A！！！！！」」……！？」
大きな声が背中の方から聞こえて
暖かい声が、私の背中を押してくれる
心臓がバクバクと動いて、ゆっくり振り返った
そこにいたのは
『………っ……』
「…辛いから見送りしたない言うてたのに、みんな揃っとるやん…」
振り返った先、グルッペンさん達が私に向かって手を振っていて
言葉が詰まり泣きそうになる私に、ゾムさんが何かを投げた
フワリフワリと風に仰がれてこちらに寄ってきたのは紙飛行機で
私たちの足元に落ちたそれを拾い顔を上げる
「…A！またな！！！」
何も言わずに俯いたゾムさんの肩を組み、手を振るコネシマさんの声が大きく響いた
紙に視線を下ろし、乱雑に書かれた「ありがとう」という文字に視界が歪み、自分の目から涙が溢れる
あぁ、本当に
私はこの国が好きだ、ここにいる人達が大好きだ
大好きだからこそ、彼等と同じように前に進みたくなる
何も言えなくなる私は深く頭を下げた
止まらない涙
動かない足
帰りたくない
『…ありがとう、ございました……っ』
鬱さんが私の頭を撫で、顔を上げる
それから彼等に手を振り背を向けた
もう、迷ってはいられない
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 765人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美雨 - 小説で久しぶりに泣きました。最高の作品でした。大好きです。 (7月26日 18時) (
レス) id: c21832273f (このIDを非表示/違反報告)
はーな(プロフ) - 読み終わったあと感動で胸が締め付けられました。神作に出会えてよかったです!! (2022年9月2日 19時) (レス) @page27 id: e031897919 (このIDを非表示/違反報告)
海 - 泣けた。やばいですよもう。 (2022年8月14日 21時) (レス) @page27 id: 5511dd41f6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 感動してめちゃめちゃ泣いた.....しかもこの小説私の誕生日に作られてる、運命かな......... (2022年7月19日 21時) (レス) @page27 id: 4f57f42090 (このIDを非表示/違反報告)
あたり(プロフ) - 最近この界隈に戻ってきて転生と外せかのシリーズを読み返していたのですがこれは読んだことなかったなと気付き読み始めたら…感動しました……外せかはガチで泣きましたけどこの作品も相当良かった……なんで当時読まなかったのかが不思議です…ありがとうございました (2022年4月17日 12時) (レス) @page27 id: f83fcb16fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
