愛と感謝 (ページ19)

今日:4 hit、昨日:15 hit、合計:133,327 hit

. ページ19

.

「廉は平気でも、俺が平気じゃないの」

そう言うと、ソファーに座らされた。

「廉、血が出るってことは、普通じゃないんだよ？」

眉を下げて真剣な眼差しで俺を見つめる。
その表情から、紫耀は冗談でも何でもなく、本気で心配してくれてることが分かって、少し苦笑い。

切り傷、だけなのに。

「…ほんま、過保護やなぁ、しょおは」

紫耀が貼ってくれた指の絆創膏は、急いで巻かれたおかげで剥がれかけていて。
それを少し直して、もう止血している傷を絆創膏の上から指でなぞる。

痛い、と少し感じた。

さっきよりも痛みは増していて、全神経が傷口に集中する。

いつもなら、気付かないふりをしていた傷口の痛みを、紫耀が教えてくれた。

紫耀の心の綺麗さには、本当に敵わない。

何度感謝の言葉を伝えても足りないくらいだ。

今度はきっと、紫耀よりも先に、他人の痛みに気付けるはず。

そして誰よりも、お前の痛みを、一番に…

【痛み/fin.】