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「 しかも、覚えてる？
おれ、お坊さんみたいな帽子かぶってたのに！」
こんなだよ、と言って、スンさんが
髪を手でかきあげて
オールバックのぺちゃんこにして見せる。
そう、実を言うと
スンさんのお店のコック帽は
被るとお坊さんのようになる、変な形の帽子なのだ。
でも、そんなの関係無い。
スンさんの優しい雰囲気は
つり目でも、帽子でも隠しきれていなかったから。
「 すごく素敵だったよ
素敵なお坊さんだったよ 」
スンさんが声を上げて笑う。
もちもちの手でわたしの頭をゆっくり撫でる。
撫でる手がだんだん早くなって
ついに 髪をぐしゃぐしゃに撫でくりまわされる。
うれしそう。満足そうな顔。
「 ゆずちゃんは、本当に優しそうだったよ
話しかけても絶対怒らないだろうなって思った。
でもなあ、
ひっかけるつもりは
微塵もなかったんだけどなあ〜 」
また笑って、頭を優しく撫でてくれる。
「 引っかかっちゃったね 」
「 うん。
わたしのこと引っかけられてうれしい？ 」
「 うれしいよ、本当にうれしい 」
そう言うと、頬を両手で包んでにこにこしながら見つめてくる。
何も言うことなく、ずっと見つめてくる。
見つめてくるその目が、いつもと違う。
酔っ払ってるから違うんだ。
スンさんは、酔うとこうなるときがある。
感情的になる。
「 おれのこと すきになってくれてうれしいなあ 」
薄い眉がぎゅっと苦しそうに下がって
下唇を噛んで何かに耐えるような顔をする。
わたしの肩に顔を埋めて
少し強めに抱きしめられる。
彼の泣いている姿にたまらなくなって、
すぐに抱きしめ返した。
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作者名：は | 作成日時：2020年10月16日 1時
