32話 ページ32
「親類縁者に犯罪組織と関係のある者がいる事がに知れれば、沖田さんがここでの立場を失うと……!」
瞬間。総悟の目が見開かれた。
フラッシュバックするのは、自分を置き去っていく背中。嫌でも過ぎるのは、真っ直ぐに鼓膜を通っていった低い声。
「しったこっちゃねーんだよ。お前のことなんざ」
しったこっちゃないだと?
全部全部、しっていた。
くっ、と息苦しくなって、堪らず踏み出した。
「あの野郎ォ!!」
「お前は動くな」
「……。側にいてやれ」
ミツバをチラリと見つめ、優しさから促した。
「それに……今のお前では足でまといだ。心に迷いのある奴は死ぬ」
淡々とした言葉がポロポロ、と総悟の胸に落ちてゆく。
「俺達を信じろってかィ」
「冗談じゃねェ。俺は奴に貸しつくるのだきゃあ御免こうむるぜ」
近藤さん。と改めて名前を呼んだ。
「アンタは俺を誤解してる。俺はアンタが思う程キレイじゃねェ。人を信じるとかそーいう奴じゃねーんだ」
「アンタ達といても溝を感じてた。俺はアンタらとは違うって、だから姉上もアンタもアイツの所へ」
近藤の拳が、総悟の左頬にめり込んだ。
メリッと青黒く染まり上がった頬ごと吹っ飛び、銀時の眠るソファに背中から激突する。
「……随分と俺には手厳しいな。近藤さんは」
前髪に瞳を隠す総悟。
近藤は赤くなった拳をはらい、少し笑った。
「そりゃお前がガキだからだ。トシがお前と同じこと言ったら、俺ァ奴も殴ったよ」
誰かがねじ曲がれば、他の二人がぶん殴ってまっすぐに戻す。彼らは昔からそうだった。だからこそ彼らはずっと、まっすぐ生きてこれた。
「てめーが勝手に掘った小せェ溝なんて俺達はしらねェよ。そんなもん」
ぐっ。拳を、胸の前で掲げる。
「何度でも飛び越えてって、何度でもてめーをブン殴りにいってやる」
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作者名:らんちゃん | 作成日時:2021年1月24日 8時