心配 ページ37
寂雷視点
ピーッ、ピーッと機会の音がなっている。
数分前とは違う音。
昏睡状態であったツキカの病室からの音だ。
寂雷「一二三くん、本当なのかい?」
廊下を歩いていた私を肩で息をしながら呼んでくれたスーツを着ている一二三くんに走りながら、そう尋ねる。
一二三「はい!独歩くんと一緒に居たら…」
今、病室からは患者の体調が正常だった場合の音が鳴っている。
_____その音が表すのは_____。
寂雷「ツキカ‼」
独歩くんの隣に、彼に支えられてベッドの上で座っているツキカの姿。
ツキカ『先生』
何ヶ月…何年ぶりだろう…、彼女の、この笑顔。
独歩くんはスッ、と立ち上がって一二三くんのいる場所まで歩いた。
独歩「では、僕たちはここで失礼します」
寂雷「うん、2人とも、ありがとう」
2人は部屋から出て行った。
ツキカ『……先生』
寂雷「?どうしたんだい?」
なるべくいつも通りの感じで話しかける。
ツキカ『…ごめんなさい。眠ってた…んですよね私。それも…、3年。独歩さんから聞きました』
寂雷「そうだね。3年間、ずっと眠っていたね」
ツキカ『…私、夢を見ていたんです。過去の。…その夢の時の流れと、現実は違ったんですね』
寂雷「…そのようだね」
ツキカ『……その……、本当にごめんなさい。何も言わずに…3年も、眠っちゃって』
その台詞を言い終わった後、今まで俯いていたツキカが顔を上げると、彼女は私の顔を見て目を見開いた。
寂雷「…?私の顔に何か…………」
指で自分の頬を撫でてみると、その原因を察知した。
寂雷「…泣いているんだね。…自分でも気付かなかった」
ツキカ『ほ、本物にごめんなさい…!』
寂雷「いや、これは………。…ツキカは謝らなくて大丈夫だよ。きっと…、目覚めてくれて嬉しかった…んじゃないかな」
自分の事なのに、まるで他人事のように言ってしまう。
寂雷「……起きてくれて、ありがとう」
ツキカは暫くぽかんと口を開けていたが、ふっと微笑んだ。
私はツキカを抱きしめ、静かに涙を流した。
118人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ