ロマンスな出会い【梅原裕一郎】 (ページ25)

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横暴ページ25

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Aが八代拓のマネージャーも担当することになった。あんまり知らない先輩や後輩の担当になるより、知ってる人だったから良かった。
そもそも一人の声優につき一人のマネージャーっていう方が珍しいから、この療養期間の間にAが無職のような感じにならなくて安心した。

その分顔を合わす時間は減ってしまった。まあ仕方がない。入院生活も併発した病気の影響で少し伸びてしまった。

病室でも出来るようなリハビリをしようかなと思い立ったとき、扉がノックされた。

「はい」
『失礼します…』
「Aか」
『はい…あの』

小さいカバンでやって来たAは八代の現場終わりなのか、いや、現場終わりならもっと荷物多いはずだと、なんかいつもと違う感じがした。

「珍しい。来るなんて」
『ちょっと言いたいことがあって』
「なに」
『あの、八代さんめちゃくちゃ優しいです』
「…は？」

八代が優しいのは俺に関係ない。いきなり何を言い出すんだ。

『優しいし、お前とか言わないし、深夜に呼び出したりしないしちゃんと自分で家に帰ります』
「だからなんだよ」
『そういうことも言わないです』
「はぁ？」
『でも…やっぱり梅原さんがいないと寂しいです…深夜に呼び出されたいです…』

勢いよく言ってたのにだんだん言葉弱くなって来た。
ついには泣きそうな声にもなっている。

『本当に私、ダメだと思ったんですけど…梅原さんのこと好きになっちゃいました…マネージャー失格です…だから…』

だから、の続きがなかなか出てこない。
きっとこいつの事だからマネージャー降りるとか言い出すんだろう。そんなこと絶対にさせない。

「お前なに言ってんだ」
『え…』
「辞めるとかそういうこと？そんなの絶対許さん」
『でも、』
「でもじゃない」

俺だってこの期間寂しかったといえば大袈裟だけど、いつもと違う日常が凄く嫌だった。中でもAがいないのが一番しんどくて苦しかった。

「俺も好きなのに無視すんなよ」
『えっ…そんな…だったら尚更一緒にいられないです…』
「なんでだよ。一緒にいた方が好都合じゃん」
『でも』
「うるせえな。ごちゃごちゃ言うな」
『凄く横暴！』

意味の分からない状況でお互い想いあってるのが分かってよかったが、それ以上のことはなにも言わないままAは帰ってしまった。
関係性は声優と担当マネージャーのままなんだろうか。退院してから問い詰めるしかないな。