ロマンスな出会い【梅原裕一郎】 (ページ16)

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初めてページ16

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目が覚めたら知らない天井が視界に入った。一瞬"終わった"と思ったけど、周りを見渡したらAの部屋だった。ゲームして寝落ちたのか。

普通に考えて良くない。大人として、表に出る仕事をしている人間として。唯一救いだったのが、ただゲームをしていただけだったということ。

『あ…お、おはようございます』
「おはよう」
『すいません、シャワー浴びちゃいました』
「お前ん家だから謝ることないでしょ」
『そうだった…』

昨日はなかなか良い勝負だった。何勝何敗かまでは覚えてないけど、結構Aも強くて何回か負けた記憶まではある。それ以降が無い。

「昨日のことだけど」
『はぇっ！？なんですか！？』
「動揺しすぎだろ。ゲームして寝落ちたんだっけ」
『そっ、そうです…』
「…やってないよな？」
『や…？ん？』
「え、どういう意味か分かってない？」
『はい…』

成人した大人なんだから意味くらい分かるだろ、なにカマトトぶってるんだと言いそうになったけど、この反応はおそらく分かってない。
ちょっと揶揄う気持ちで、Aに近付いて、本業の声を存分に生かして囁いた。離れたら顔を真っ赤にして動揺を隠しきれていなかったのが本当に面白い。

『何言ってるんですか！最低！梅原さんのド変態！』
「別に男女なら誰だってするだろ」
『マネージャーと担当声優ですよ！そんなのある訳ないじゃないですか！そもそも私今までそんなことしたことな…』

したことないって言おうとした？まじで？

『い、今のは忘れてください』
「忘れられるわけないだろ。死ぬまで覚えててやるよ」
『最低！』
「最低で結構。てか腹減った」
『朝ごはん、和食派ですか？』
「あるもので」
『じゃあ和食で』

こんなに美味しいの作れるのに今まで…と余計なことばかり考えてしまう。

「彼氏出来たことないの？」
『な、ないです…』
「へえ。なんで？」
『なんで…？友達いわく、お兄ちゃんのせいかもねって』
「お兄ちゃん？」

Aのお兄さんは地元でかなりヤンチャしてたというのは以前聞いた。その兄を怖かって周りの人間はAもヤンチャなんじゃないか、そしてそんな妹を誑かそう男がいたら兄が黙ってないと思い距離を置いてたらしい。

「小動物みたいなのにな」
『それで気付けばこんな感じに…』
「面白い人生だな」
『まあ、人よりかは？って感じです』

兄がヤンキーで周りの人間から距離を置かれ、内定逃して声優のマネージャーになった女なんて聞いたことがない。