検索窓
今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:27,093 hit

10.お願い ページ10

「でも何故ここなんだい?」


「何となく……じゃ駄目ですか?」


「駄目だね。
 態々びしょ濡れになって迄来たんだ。
 理由位は訊いても良いだろう?」


子供の様な目で太宰は彼女を見る。
まるで,自分が子供の頃にしたやり取りを思い出すかのように。

彼女は微笑んで頷いた。


「相応しいと思ったからですよ。
 私と貴方の始まりの場,ですから」


「私と君の別れにも,かい?」



「!!」


自分の言葉を引き継いだ太宰に,彼女は驚いたように目を見開く。


「と云っても私は君と別れる気は無いけどね」


クスクス笑う太宰を,彼女は真っ直ぐに見る。



「いいえ,太宰さん。
 今日が最後です。
 私はもう貴方に逢わないし,貴方も私に逢う事は無い」



太宰の笑みが消える。


「A,何で君は―――」



「今までありがとうございました。
 貴方は私に生きる意味を与えて呉れました。
 貴方のお陰で私は今まで生きていられた」


「何故なんだ,A!
 君がマフィアだからか?
 私が探偵社員だからか?
 何故君は私の前から去ろうとする?!
 君と居られるなら私は何だってする!
 だからお願いだ,A!
 君まで……君まで私の前から消えないで呉れ……」


一息に喋った太宰は肩を上下に動かし乍ら彼女を見る。
それはまるで,行き場を無くした野良犬の様で……。


「A。
 君が死んだって聞いた時,どれだけ悲しかったか。
 君と再び逢えた時,どれだけ嬉しかったか」


「御免。
 御免なさい」


固く握りしめた拳を震わせ乍ら彼女は云う。


「太宰さん。
 これで最後ですから,お願いがあります」


「ねえ,厭だよA!」



「太宰さん,私を抱き締めてください」

11.誰も何も→←9.その海は



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (96 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
127人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

SEA(プロフ) - 村人Cさん» コメントありがとうございます。全然更新してなくて本当に申し訳ないです……。頑張ります! (__) (2023年2月10日 23時) (レス) id: 40e007873e (このIDを非表示/違反報告)
村人C - 更新楽しみにしてます (2023年2月9日 22時) (レス) @page23 id: 5242a52298 (このIDを非表示/違反報告)
SEA(プロフ) - 南無いちさん» コメントありがとうございます。おかげさまでめっちゃ頑張れそうです笑 これからもよろしくお願いします! (2022年12月27日 16時) (レス) id: 40e007873e (このIDを非表示/違反報告)
南無いち(プロフ) - 切ないのに甘くて最高です!!!if編も読めるなんて感激です!!更新楽しみです!!頑張って下さい!! (2022年12月27日 16時) (レス) id: b659a75de8 (このIDを非表示/違反報告)
SEA(プロフ) - エリスさん» コメントありがとうございます。最近更新できていなくて申し訳ないです……。良いものが書けるよう頑張ります。 (2022年12月27日 12時) (レス) id: 40e007873e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:SEA | 作成日時:2022年11月26日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。