3 ページ7
*
そして、冒頭に戻る。
「そういやさ、けんちゃんどうやってわたしのこと、運んでくれたの?」
「いまやったろか?」
「え」
いやな予感しかしない。
「ちょちょちょ、え、は?ちょっと、セクハラ!」
「なんやねんどうやったんか聞いたのそっちやろ」
真顔でわたしの膝の裏に腕を回そうとしたけんちゃんの手をはたき落としながら、ダメ元できいてみる。
「まさかとは思うけど、お姫様だっこしたって、こと?」
「せやで」
たぶん。いま、顔、真っ赤。
まずい。
太陽が落ちてくるまでは、まだ時間がある。
「は、お前、りんごみたいやなあ」
「そうやって!人のこと、からかわんとって!」
そうやって。
思わせぶりなことなんて、しないでほしい。
「からかってへんよ」
「嘘や、面白がってんやろ」
「なあ、」
突然立ち止まったけんちゃんに、歩く速度を止められないまま背中にぶつかる。
「うわっ、ぶ」
「意識、した?」
悪戯に笑うけんちゃん、
そんな顔は、しらなかった。
「ちょ、どういう…」
言い終わる前に、そっと触れてはなれた唇。
少しカサついたそれは、たしかにわたしの口に触れた。
「お前、鈍感すぎんねん、アホ」
そのままスタスタ歩き出した背中を、回らない思考のまま追いかけた。
.
219人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きゃめ(プロフ) - 朱星さん» 好きと言ってくださってありがとうございます!一緒に夏を楽しめるといいなあと思ったので嬉しいです◎いくつか刺さりましたよ!頑張ります!よかったらまたリク飛ばしてください! (2020年9月8日 18時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
朱星 - 夏のお話めっちゃ好き!今年の夏は何もなかった…。妄想補填大賛成!お祭り、花火大会、プール、海、星空、バーゲン、夜景、夏期講習の帰り道。何か変なのもありますが、どれか、きゃめさんにさされー(笑) (2020年9月7日 20時) (レス) id: acf62d2dcf (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» コメントありがとうございます!リアクションがあると書いていてとってもやる気になりますので嬉しいです。貧血のときの朝ってもう最悪じゃないですか…その先にこんくらいイベントあるなら頑張れるかなって妄想にお付き合いくださりありがとうございます◎ (2020年9月6日 10時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ますみ(プロフ) - 今度は川西さんですね。関係性も凄く良かったです。川西さんの優しさもあってちょいツンデレな川西さんにキュンキュンしました。確かにこの時の貧血はやばいですもんね。むっちゃ共感しました。 (2020年9月5日 21時) (レス) id: cc9c552fc9 (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» 自分の気持ち乗せまくって書いたので共感していただけるのとっても嬉しいです。お待ちしております◎ (2020年9月5日 9時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きゃめ | 作成日時:2020年9月4日 21時