4 ページ8
＊
「ねえ、ちょ、ま、まって！」
必死にちょこまか追いかけてくるAは、相変わらず耳まで真っ赤で。
なんやねん人の気もしらんで。
「そんな顔してると、またキスすんで」
歩く足は止めずに、振り向きながらそう言えば、いよいよ思考のキャパを超えたのか声にならない声だけ漏らして。
それでも付いてくるんやから、加虐心に拍車がかかる。
Aは、いつも底抜けに明るくて、誰にでも分け隔てなくて、かわいいって言うやつは部活内にも何人もいた。
それを必死に牽制して、誰よりも近いポジションを手に入れたら。
せっかく、勇気を出して名前で読んだら向こうはけんちゃんって呼んでくるし、なんか最高のマブダチみたいなポジションに落ち着いてしまって。
いつもははちゃめちゃに元気なくせに、月のものの時だけ真っ青な顔をしていて、フラフラしていて心配でしゃーなくて。
そのたびに保健室に運んでたのも、一番に見つけてたのも、偶然や思ってるんやからほんまにむかつく。
「ね、ねえ！ねえってば！」
無理やり引かれた腕に、前に進むままだった体は勢いよく引き止められる。
「……っうわ、なんやねん」
「さ、さっきの！ど、どーいうつもりで」
真っ赤な目。
潤んだ瞳。
一生懸命追いかけたせいで、息は乱れて。
そっちこそ、どーいうつもりやねんな。襲うぞ。
「俺が遊びでそんなことする奴やと思うか？」
「思ってないから、だから、びっくりしてるんやって。」
だって、そんなはずないやん。
そうやって、小さくつぶやいた彼女の顔を、顎から指で掬い上げる。
「一回しか、言わへんからな」
「Aが、好きや」
「は、へ？」
戸惑ったマヌケ顔のままのAの顔を、両頬から両手で挟んで。
「は、アホ面やなあ」
返事は待たずに。
今度はちょっと深めにキスをした。
鈍感娘とツンデレ君
(ちょ、さっきから！けんちゃんばっかずるい！)
(なんやねん)
(わたしも、大好きやで、賢志郎)
(………っ、な！おま、)
(へへーアホ面ー！)
(襲うぞコラ！)
甘々な日々には、ほど遠いけど。
うちらには、これでいいのかも。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 219人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きゃめ(プロフ) - 朱星さん» 好きと言ってくださってありがとうございます！一緒に夏を楽しめるといいなあと思ったので嬉しいです◎いくつか刺さりましたよ！頑張ります！よかったらまたリク飛ばしてください！ (2020年9月8日 18時) (
レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
朱星 - 夏のお話めっちゃ好き！今年の夏は何もなかった…。妄想補填大賛成！お祭り、花火大会、プール、海、星空、バーゲン、夜景、夏期講習の帰り道。何か変なのもありますが、どれか、きゃめさんにさされー(笑) (2020年9月7日 20時) (レス) id: acf62d2dcf (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» コメントありがとうございます！リアクションがあると書いていてとってもやる気になりますので嬉しいです。貧血のときの朝ってもう最悪じゃないですか…その先にこんくらいイベントあるなら頑張れるかなって妄想にお付き合いくださりありがとうございます◎ (2020年9月6日 10時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ますみ(プロフ) - 今度は川西さんですね。関係性も凄く良かったです。川西さんの優しさもあってちょいツンデレな川西さんにキュンキュンしました。確かにこの時の貧血はやばいですもんね。むっちゃ共感しました。 (2020年9月5日 21時) (レス) id: cc9c552fc9 (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» 自分の気持ち乗せまくって書いたので共感していただけるのとっても嬉しいです。お待ちしております◎ (2020年9月5日 9時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きゃめ | 作成日時：2020年9月4日 21時
