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「…ん」
誰かに引き寄せられる感覚と、耳元で聞こえた小さな唸りで目が覚めた。
天井を見つめたまま暫くの放心。
徐々に覚醒していく脳から身体に指令を送り、顔を右へ向ければ端正な顔が視界いっぱいに広がった。
「…悟。…一時、夕方に帰って来て…、寝ちゃったのか…」
寝起き特有の掠れた声で、現状を声に出して確認する。
帰宅して数時間後からの記憶が曖昧だが、下着一枚の悟とやけに薄着の私の格好から直ぐに全てを察した。
悟に布団を掛け直し、痛む腰を擦りながら身体を起こす。
「…涼しい」
乾いた喉を潤す為にキッチンで麦茶を入れ、それを手にベランダへ出た。
九月上旬でも東京はまだまだ暑い日が続くが、夜はそれなりに涼しくなる。
「…明日から出張か」
明日以降は、一人。悟とも暫くは会えない。
そう思うと、毎年の事でも寂しさは募っていく。
まあやるしか無いかと麦茶を口にすれば、少し薄着過ぎたのか、肌に触れる風に身震いし、鼻を啜る。
そろそろ中に入ろうと、手摺りから腕を引いた時。後ろから肌触りの良いブランケットと共に、暖かな体温に包まれた。
「何してんの、泣いてる?」
「ふふっ、泣いてないわよ。ちょっと寒くて鼻啜っただけ」
明日から貴方に会えないと思うと泣けるけれどね。なんて甘ったるい事を言えば、俺も。なんて素を出しながら肩口に額を擦り寄せる悟。
素肌に触れる柔らかな髪に擽ったさを感じながら、頑張りましょうねと、彼の髪を優しく撫でた。
「はーあ、行きたくねえなー」
「じゃあ、早めに終わらせて帰ってきましょう」
期間は一週間と少しだけれど、多少無理をすれば数日で終わらせる事は可能だ。
私達なら出来るでしょう?と微笑めば、当たり前だと頬にキスをされる。
「ふふっ、確実に死んじゃうわね」
「はっ、余裕だろ」
Aと早く会えるなら何徹でもしてやるよ。なんて良いのか悪いのか分からない事を言われ、声を出して笑ってしまった。
__確かに、私も貴方に早く会えるなら、どんな無茶も出来そうよ。
何て、本人に言えば調子に乗りそうなので敢えて口には出さなかった。
「もう寝よ、ちゃんと休めるのは今日が最後だ」
間違い無いと、星空の下キスを交わし寝室へと戻り、キングサイズのベッドの上で、二人身を寄せ合い眠りについた__
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作者名:HamA | 作成日時:2020年12月14日 0時