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「伊地知、お疲れ様。」
「お疲れ様です、鬼禱さん。」
相変わらず痩せこけた頬と目の下に隈を携えた伊地知に挨拶をしながら車に乗り込む。
私より少し歳上の彼は、超がつく程の仕事人間だ。
運転席から手渡された端末を受け取り、これから向かう現場の状態や呪霊の情報を頭にインプットしながら伊地知と他愛の無い話をする。
「伊地知、ちゃんと寝てる?」
「ええ、仕事の合間に仮眠をしっかり取っていますよ。」
仮眠はちゃんと寝ているとは言わないのではないかと疑問に思ったが、此処でそれを言ったところで感覚がズレている彼に話は通じないだろう。
加えて、食事はしっかり取っているのかと聞けば、栄養ドリンクやらカロリーを摂取できる菓子の様な物などを食べていると聞き、流石にまずいのでは無いかと思い、端末の電源を落としながらバックミラー越しに彼の顔を見据え口を開く。
「伊地知、食事も睡眠も仕事の内よ。貴方がいなければ進まない仕事が沢山あるし、私と悟はいつも貴方のスムーズな事務仕事に助けられてるわ。彼は御礼なんか言う様な人では無いから、分かりにくいと思うけれど。…元気で居て頂戴。」
「っ…、はいっ…。」
自分の事をそんなに心配してくれるのは私と家入さんだけですと泣き始めた伊地知の肩に手を乗せる。
彼はとても優秀な補助監督だ。
彼と行く任務は、事が早く進んでやり易い。
私や悟の我儘を実現させ、上に文句を言われる板挟み状態の彼を、皆も少しは労った方が良い。
「皆、貴方が出来る人だって分かってるから無茶を言うの。私もそうだから人の事言えないけれど、いつも有難う。」
「泣かせないでください本当にっ…!」
涙で視界が歪んでいるのか車内が僅かに揺れ、安全運転して頂戴ねと、泣いている伊地知に笑いながら注意をした。
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作者名:HamA | 作成日時:2020年10月20日 21時