あ ろっと おぶ…らぶ ▽７

ピアノのお稽古　In/you ページ20

▽いのパパと娘




うちのパパはピアノの先生だ。


小さい頃からパパの隣でピアノを聴いて、たまに教えてもらったりして。

小学校にあがってからは、ちゃんと週一でお稽古をつけてもらった。


英才教育のおかげもあって、小学三年生にしては難しい教本まで進んでるみたいなんだ。

だけど…やっぱり最近はレベルが高い曲が多くなって、なんだか楽しくない。


好きな曲を弾けるようになるには、こういう曲をたくさん練習しなきゃいけないんだよってパパは言うけど、私は知ってる曲とか知ってるメロディを弾いてる方が楽しいし…


毎日のように開いてた厚い赤色の教本を開くのも嫌になってきて、ほったらかしにして5日が経った。

練習をしたら丸を書くカードは5日前から真っ白なまま。明日はお稽古の日なのに…



「……バレない…よ、ね…？」



練習は今日やればなんとかなりそうだし、真っ白だった5日間に赤い丸を書き足した。

久しぶりにピアノを弾いたら、数日弾いてないだけなのに、なんだか前のお稽古の時より弾けなくなってる？ってちょっと思っちゃったけど…
今日たくさん練習すれば、すぐに元に戻るよね…？


そんなこんなでお稽古の時間がやってきた。

私が弾いてる横でパパが見てる。


練習してないのバレないかな？ってちょっとドキドキ。
そしたら指を間違えて何回も同じところを弾き直して…



「…えへへ、いっぱい間違えちゃった…」



偶然、って思ってくれたらいいんだけどなぁ…



「A、ちゃんと練習した？」



ぎくり。



「…したよ？ほら、カードに丸ついてるでしょっ」


「カードのこと聞いてるんじゃないの。本当に練習した？」


「…した、よ…」



どうしよう、パパが怖い。

もう気づいてるのかも…

でも、1日しか練習してません、なんて言えないよ…



泣きそうになって下を向いたら、パパに椅子から降ろされた。

そのままパパは私の手を引っ張って、部屋の外にぽんって放り出した。



「パパ…？」


「今日は終わり。嘘つく子になんて教えてあげたくないからね」


「！？…うそ、ついてないもん…練習したもん…」


「カードの通りに、ホントにしたの？指だって全然動いてないし、練習してないのわかるんだよ」


「っ…」


「今のAに何教えても意味ないから今日はおしまい。練習するなら買ってあげたキーボード使いな？」



目の前の扉がバタンて閉まって、私は廊下に一人取り残された。

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