あ ろっと おぶ…らぶ ▽２

あぶない遊び　Yb/In.Ar ページ4

▽薮パパといのあり兄弟の話



・



*


「にいちゃん、まだ〜？」

「…うるさいなぁ、もう。先にしてればいーじゃん」



急かすように話しかける大貴に、怪訝そうに言葉を返すのは兄の慧。

宿題が終わってから一緒にゲームをする予定なのだが、小学3年生の大貴の宿題より小学5年生の慧の宿題の方が難しくて時間がかかるのは当然だ。



「やだ！にいちゃんと一緒にしたいんだもん！」

「…わかったから、もうちょっと待って」



基本的に仲の良いこの兄弟。
大貴はうるさくしながらも『一緒にゲームがしたい』というそれだけのために慧を待っていた。


キャスター付きのイスでクルクル回りながら暇を潰していた大貴は、ふとある遊びを思いつく。



「にいちゃん、にいちゃんっ！」

「なんだよぉ、もう…」

「いいから！一回みて！！」



渋々手を止めて振り返ると、部屋の端にキャスター付きのイスを寄せた大貴が目をキラキラさせていた。

大貴はそのイスの背もたれを掴んで、イスの上に膝立ちしている。



「いいっ？みててねっ！」



そして、片方の足で後ろの壁を思い切り蹴った。


ぐんっと勢いをつけて前に進むイス。
反対側の壁にくっつくように置いてある慧の机まで、大貴はイスに乗ったままやってきた。



「すごくない！？こんなに進むんだよ！」

「…え、超楽しそう…俺もやるっ！」



仲良し兄弟ゆえに、弟のノリについつい乗ってしまう兄。

ゲームのことは忘れ、2人はその遊びに夢中になった。



毎日座っていたイスなのに、どうしてこんなに楽しい遊びを今まで思いつかなかったのか！
と、そんな事を考えてしまうほど、その単純な遊びは楽しくて、2人を夢中にさせた。


距離の競い合いと少しのスリルが癖になって、何度も何度も繰り返す。

部屋の中で遊びを満喫し尽くすと、今度はもっと楽しい事をしたくなる。



「ねぇー、これさ、廊下でやったらどれくらい滑るかなぁ？」



そう言い出したのは大貴。

慧も興味があったようで、いそいそと部屋から廊下にイスを出した。


やはり廊下は部屋の中よりも距離が長く、楽しそう！と顔を見合わせる2人。

しかし2人は忘れていたのだ。
部屋の中には無くて、廊下にはあるもの…

それは、階段という落とし穴。


細長い廊下では左右の幅が限られ、一方の壁には一階に続く階段が口を大きく開けている。

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