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何のお説教もないまま、ひたすらに叩かれる時間がどれだけ続いただろうか。
ひっきりなしに降っていた手がやっと止まった。
雄也は詰めていた息を吐き出し、はぁはぁと肩で息をつく。
お尻が痛くて熱い。たかがお尻叩きでこんなにも痛い思いをさせられるなんて思ってもみず、頭はまだ混乱している。
油断すると涙がこぼれそうで、プライドだけでなんとか耐えていたが、もう限界だ。
それなのに、山田の声は依然厳しいまま雄也に向けられる。
「…雄也さん、わかりました?俺が本気で怒ってるってこと」
「っ…」
「まったく…。体調悪いの隠して、無理して、誰が良い思いするんすか!」
バチィィンッ!!
「!?!?った、あぁっ…!」
ここにきてさらに強い一打。
もう嫌だと頭を振るが、山田は続ける。
「無理するなって、俺、言いましたよね。はぐらかして、誤魔化して…現場で倒れて、良いことありました?」
「っ、、」
「撮影、そのあと1時間中断ですよ。雄也さんが倒れて、みんな心配したんです。無理して良いことありましたか!?」
バチィィンッ!!バチィィンッ!!
「〜〜っ!!…っく、あぅ…」
もう無理だ、限界だ。頭ではそう思うのに、声にしようとすると涙が込み上げてきて思った言葉にならない。
「現場のスタッフさん、自分たちが無理させたって、謝ってくれたんすよ。光さんも、伊野尾さんも、雄也さんのこと心配して、倒れたあとずっとつきっきりで看病してくれたんです。無理するって、自分のことも周りのことも大事にしない行為なんですよ!わかりますか!?」
バチィィンッ!!バチィィンッ!!
「っう゛、あぁっ!!わかっ……わかったっ…!やまだっ、やめっ…」
バチィィンッ!!バチィィンッ!!
「ごめっ……ごめん、わかったからっ!!もうやめてッ……!!」
込み上げてくる涙を必死に堪えながら言うと、やっと手が止まった。
山田が、ふぅーっと大きく息を吐き出したのがわかる。
「やっと、本気で言ってくれましたね」
「!!ぁ…」
「…雄也さん、お願いですから、体大事にしてください。雄也さんのこと心配してる人、たくさんいるんですから」
「……っ、はい……」
雄也は山田からの注意に、初めて素直に返事をした。
痛くて必死だったはずなのに、山田に言われたことが心にずっしりと残っている。
あぁそうか、悪いことをしたんだと、雄也はやっと腑に落ちていた。
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いちとま - みつあめさん» もう何周も読まさせて頂いています!これからも過去の作品たちを読み返しながらゆっくり待っていますね(*ˊ▿ˋ*) (2022年11月27日 13時) (レス) id: 183d13b82a (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - いちとまさん» う、嬉しすぎます😭❤︎ありがとうございます!これからも面白いと思ってもらえる作品を残せるように頑張ります✨ (2022年11月22日 23時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
いちとま - みつあめさん» 書き方って、中々納得いくものに出会えないですよね!別の方のこのジャンルのお話を読んでも何処か物足りなさを感じて、結局みつあめ様の作品を読み返しているんですよね😂それ程に面白いと思っています!ご多忙だとは思いますが、いつまでも次の更新を待っています! (2022年11月22日 2時) (レス) id: 183d13b82a (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - いちとまさん» お久しぶりです!コメントありがとうございます✨作品を作る上で書き方は日々迷走して苦しんでいる部分でもあるので、褒めていただけてとても嬉しいです!これからもマイペースな更新になるかと思いますが、よろしくお願いします🙇♀️ (2022年11月20日 21時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
いちとま - 久しぶりにコメ失礼致します!僕はこのジャンルを取り扱われている方の作者様の中でもみつあめ様の書き方が1番好みなんですよね!なので、サイトの方も此方も更新すごく楽しみにしています!みつあめ様のペースで頑張って下さい(^-^) (2022年11月19日 21時) (レス) id: 183d13b82a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みつあめ | 作成日時:2022年8月3日 0時