【川西賢志郎】キレイな心。 (ページ10)

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ライムレーンページ10

「はい！駅の近くに新しくできたライムレーンっていうコスメ店で働いてるんです！このミストの香り、私も大好きで人気がすごいんですよ！予約の数も...」

化粧品とか香りとか、そういうものに疎い俺はただ黙って話を聞くことしかできなかった。

彼女から聞いたことをまとめると

まず、彼女のバイトというのは化粧品販売員。

新しくできた有名なコスメブランド「ライムレーン」で働いている。

他にもこのミストの成分とか人気商品とかも嬉しそうに話してくれたが正直

違いが分からない俺はへぇ～と頷いているだけだった。

「あっ！すいません！私の話ばっかりこんなにしちゃって...」

「いやいや！全然ええよ！若いのに厳しそうなところで働いて学校とも両立って大変やなぁ...」

「大変ですけど化粧品とかそういうキレイになれるものが好きなので楽しいです！私も違う香りですけどベローミスト使ってるんですよ！」

あぁ、そうか。だから水田のミストと少し香りが似てたんや。

「その香り、すごいAちゃんに似合ってる気ぃするわ」

あの時、電車の中で惹きつけられた匂いを思い出す。

今もなお微かに香る匂いに誘われまた自然な気持ちを口にしてしまった。

「フフッ、どうしたんですか、急に」

また小悪魔に笑う彼女はいつだって俺の心を奪うのが上手い。

照れるのを通り越し、恥ずかしくなった俺は運転席に移動しそそくさと足を進めた。

「何か運命みたいですよね！こうやって何かしらの縁で車に乗せてもらっちゃって」

Aちゃんの家の下についた時、ずるい言葉を交わされた。

「今日は本当にありがとうございました。失礼します」

たわいのない話を車でした後に、急に律儀になったりずるい言葉を交わしたり。

「お、おう！じゃあな」

笑顔を見せたあとあっけなく写っていた彼女の後ろ姿。

その後ろ姿は本当に華奢でキレイで。

したいこと、言いたいこと。まだまだあった。

運命みたいですよね、って。そんなの俺が１番思っていたこと。

簡単に俺の想いを口にしてしまう彼女は、何を思っているんだろう。

その割に連絡先も聞かせる時間すら許さない。本当に不思議な人だ。

彼女に会うための術は「ライムレーン」

勝手に彼女が俺を待っているような気がした。