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鏡に映し出されたのは、いつものような重い打掛ではなく爽やかな納戸色(なんどいろ)をした着物。紅色など明るい色を基調とした着物を着なければならなかった吉原とは大違いだ。穢れの色など一切なく美しさに溢れている。




「……っ、」




うらたさんの言葉が頭の中にずっとあった。
答える隙を与えず、そっと私の頬を手で撫でたあと部屋を出ていったため、何も言葉を返せていない。

どうすればいいものか、という気持ちがずっと心の片隅にあった。ここで匿ってもらえるのはとてもありがたいのだが、恋にはまだ達していないのは自分でもわかっていた。


迷惑だけは、かけたくない。


縁側に座って、空を眺める。
杵築から父上の場所…そう、香流は百三十里ほど離れているが、父上たちがこちらまで迫ってきているのは知っている。


どうすれば良いものかわからず、いろんな感情でぐちゃぐちゃになってしまったのを吐き出すためため息をひとつついた。



「どうしたん?ため息なんか吐いて」



昨夜も聞いた京言葉。
……センラさんだ。



「朝飯持ってきたで〜お腹空いたやろ。
ほら、食べ?」


「ありがとうございます」



おぼんに載せられた白米と味噌汁と漬物、それに小さめの魚。縁側から机の方へ移動し、「いただきます」と手を合わせるのを彼は隣で胡座をかいて見守るように見つめる。



「気になってたんやけどさ、」


「はい?」


「うらたんとどういう関係なん?」



怪しがる…とかそういうのじゃなくて、ただ普通に不思議しうな顔でそう尋ねられる。

何もやましいことはない…はず。



「うらたんがAのことを気にして吉原に会いに行ったってのは知ってんねんけど、ほんまにそれだけなん?」




まぁうらたさん女に興味無さそうやけどなー…と自分で自分に感心するような言い方。吉原であったことといえば本当にそれくらいだ。

事が動いたのは、ついさっき。



「ええ、本当にそれだけです」


さっきのことはあえて言わないでおこう。


さすが杵築ともなれば吉原の遊女に与える食事とは大いに違う。久々に白米を食べた気がする……美味しい。

はやくも最後のひとくちとなってしまった白米をお箸でつかみ、口に運ぶ。


センラさんは、「へぇー…」と何か言いたげな様子。体制は変わらず胡座をかいて……いたはずだった。




「ほんなら、俺が貰ってもええってことやんな?」




気がついた時には、その距離三寸。




百三十里:520km

三寸:9cm



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設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手 , 曲パロ   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - 牡丹一華。@坂田家さん» はじめまして。ありがとうございます…!そのお言葉が一番の褒め言葉です( ; ; )ご期待に添えるよう執筆頑張りますね◎ぜひこれからも読んでくださると嬉しいです!よろしくお願い致します (2020年1月11日 8時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華。@坂田家 - 夜分遅くに失礼します。作品を読ませていただきました。この作品のページが進めば進むほどのめり込みました。続編も読ませていただきますね。 (2020年1月11日 4時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 舶(ハク)@月ノ山天文部さん» ありがとうございます!!書き方いろいろ工夫しながら書いてるので褒めてもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(///)更新頑張りますね!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 23時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - 誤字すみません……すごきではなくすごくです…… (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - お話すごく好きです!うらたさんかっこいい……更新楽しみに待っています、頑張ってください!あと書き方すごき上手くてとても読みやすいです(*´ω`*) (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/  
作成日時:2019年4月27日 0時

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