* ページ9
侵入してきた手は、着物の襟を肩までずらす。
顕になった肩には、いつしかの引っかき傷。
片手で器用に、前で結んである帯をするりと解く。
帯で縛られていた腹部が解放され、少しだけ息苦しさが消えた。
手首は相変わらず掴まれたまま自由は効かない。
「金があればなんでも解決出来るんだ。ここで何しようと関係ないだろう?」
耳に吐息がかかり、くすぐったい。
その美しい顔は、すぐそこまで迫っていた。
「遊女ってのは感じちゃいけねぇんだろ?」
そう、遊女の暗黙のルール「感じるのは遊女の恥」
行為の度に絶頂に達していたら身体がもたないし、感じると妊娠してしまうというなんの根拠もない噂話が本気で信じられているからだ。
あぁ、もう!本当にバカらしい。
「俺が感じさせてやる」
妖艶な笑みを浮かべ、私の耳元でそう呟いた。
今日会ったばかりの彼が一体何者でどんな人生を歩んできたかは私にはわからない。
ただ、片隅に信頼を置いていたのは確か。だから、
……違う、そうじゃない。
穢れている私と身体を重ねると、彼も穢れてしまう。それが何より嫌だった。
「お願い、…やめて……っ」
初会で襲おうとしたことがもし外に漏れると、うらたさんが処されてしまうことにどこかで気づいていたのか、必死に絞り出した声の声量は控えめだった。
翡翠のように輝く瞳がゆらりと大きく揺れた。
そして、きゅっと掴まれっぱなしだった手首が緩まり、血液の流れが戻りじんわりと熱くなる。
.
.
「……ちゃんと反抗できるじゃねぇか」
体制は相変わらずだが、その瞳には優しさが戻っていた。
.
962人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
透(プロフ) - 牡丹一華。@坂田家さん» はじめまして。ありがとうございます…!そのお言葉が一番の褒め言葉です( ; ; )ご期待に添えるよう執筆頑張りますね◎ぜひこれからも読んでくださると嬉しいです!よろしくお願い致します (2020年1月11日 8時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華。@坂田家 - 夜分遅くに失礼します。作品を読ませていただきました。この作品のページが進めば進むほどのめり込みました。続編も読ませていただきますね。 (2020年1月11日 4時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 舶(ハク)@月ノ山天文部さん» ありがとうございます!!書き方いろいろ工夫しながら書いてるので褒めてもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(///)更新頑張りますね!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 23時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - 誤字すみません……すごきではなくすごくです…… (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - お話すごく好きです!うらたさんかっこいい……更新楽しみに待っています、頑張ってください!あと書き方すごき上手くてとても読みやすいです(*´ω`*) (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:透 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2019年4月27日 0時