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(肆)愛別離苦 ページ16

うらたさんに会ったのは、あれから数日経ってからだった。まさかまた会えると思っておらず、主として入ってきてくれた時は心が弾んだ。

うらたさんといると、遊女ではなく1人の人間としていることができる気がする。




「またいらしてくれたんですね」


「まぁな、」




ストン、と畳の上に腰を下ろすうらたさんの隣に私も正座をして座る。






「お酒は呑めないんでしたっけ」





普段は直ぐに忘れてしまう主の好みも、不思議と覚えていた。

坂田さんのことは言わないでおこう。約束通り。





「今日は、お前の過去を教えて貰いに来た」


「……過去、ですか」


「Aが何故吉原遊廓で働くことになったのか」


「そんなの、ほかの遊女たちと同じです」


「目が違った。お前だけ」


「……っ、」




すべて見破られているようなその目に吸い込まれそう。





「……言えません」





ふいと首を背けた。

しかし、顎を掴まれ再びうらたさんと目が合う。

慣れているはずなのに、高鳴ってしまう胸が情けない。私にはそんな高鳴り、似合わないのに。





「俺はお前を、助けてやれるかもしれない」





彼の美しい顔はすぐそこまで迫っていた。

真剣な瞳から、その言葉が虚言だとは思わなかったし思いたくなかった。向日葵が刺繍された手甲が目に入る。……そう言えば、坂田さんのは桜だったっけ。






「信じても、いいですか……」


「あぁ、」







うらたさんの崩れた表情と共に、ふわりとうらたさんの匂いとぬくもり包まれた。






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設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手 , 曲パロ   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - 牡丹一華。@坂田家さん» はじめまして。ありがとうございます…!そのお言葉が一番の褒め言葉です( ; ; )ご期待に添えるよう執筆頑張りますね◎ぜひこれからも読んでくださると嬉しいです!よろしくお願い致します (2020年1月11日 8時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華。@坂田家 - 夜分遅くに失礼します。作品を読ませていただきました。この作品のページが進めば進むほどのめり込みました。続編も読ませていただきますね。 (2020年1月11日 4時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 舶(ハク)@月ノ山天文部さん» ありがとうございます!!書き方いろいろ工夫しながら書いてるので褒めてもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(///)更新頑張りますね!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 23時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - 誤字すみません……すごきではなくすごくです…… (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - お話すごく好きです!うらたさんかっこいい……更新楽しみに待っています、頑張ってください!あと書き方すごき上手くてとても読みやすいです(*´ω`*) (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/  
作成日時:2019年4月27日 0時

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