きみに花束は渡せない【進撃の巨人】 (ページ26)

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───翌日、朝

ついに訓練がはじまった。

初日の科目は兵団にとって最大の武器、立体機動装置だ。

｢まずは貴様らの適正を見る！両側の腰にロープを繋いでぶら下がるだけだ！全身のベルトでバランスを取れ！これができない奴は囮にも使えん！………

開拓地に移ってもらう｣

わたしに秀でた運動神経だとか体幹だとか、そんなものがあるとは到底思えないけど

逆に音痴というわけでもなく、体力もそこそこあると自負している。

…なんというか、つまり体力だけある普通の人ってことだ。

4つのグループに分かれ、トップバッターを任された男の子がジタバタしながらようやく宙に留まった。

それを眺めながら自分の番を待つ間、わたしの後ろを歩く教官たちの会話が聞こえた。

｢これはまだまだ初歩の初歩だが、この段階から立体機動の素質は見てとれる。……ん、見ろ｣

そうして教官たちの足が止まったのでつられて隣の模擬装置に目をやると、綺麗に大人しくぶら下がるミカサの姿があった。

｢全くブレがない。何をどうすればいいのか全てわかるのだろう。素質とはそういうものだ｣

ミカサと開拓地で2年過ごす中で薄々勘づいていたけど、やはりわたしがさっき挙げた全部が人より優れている。

確かアルミンをいじめていた子たちもミカサを見ると逃げ出していたな…ぶん殴ったりしていたんだろうか。

などと想像を膨らませていると、メンバーが交代し

すでに見知った顔ぶれが並んだ。

｢うん。今期はできる者が多いようだ｣

｢あの…彼は…？｣

｢…素質というものだろう。人並み以上にできることがあれば…人並み以上にできないこともある｣

不穏な言葉に思わず模擬装置を端から順に目線を移していくと、わたしと真逆の位置のグループでエレンがひっくり返っていた。

｢何をやっているエレン・イェーガー！！上体を起こせ！｣

続けてシャーディス教官の怒号が飛んだ。

周りはバカにする大多数と心配の目を向ける若干2名で囲まれていた。

『エレ…』

｢A！次お前だぞ｣

ミカサとは違って、エレンに非凡な才能があると思う瞬間はなかったけど

なぜだかエレンはそれと同等の力があると思わせるところがある。

エレンに出来ないなんてことは───・・・

そこまで考えて、わたしは模擬装置で宙に浮いた。